時評(2月13日)

東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(元首相)が女性蔑視発言で辞任に追い込まれた。新型コロナウイルスにより1年間延期された大会は、感染再拡大で今夏の開催が危ぶまれている。そのさなかの暴言で、国内の五輪熱は一気に冷め、海外からの批判.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(元首相)が女性蔑視発言で辞任に追い込まれた。新型コロナウイルスにより1年間延期された大会は、感染再拡大で今夏の開催が危ぶまれている。そのさなかの暴言で、国内の五輪熱は一気に冷め、海外からの批判も高まっていた。7月23日の五輪開幕を目指すには、まず世論の支持を回復しなければならない。[br] 森氏の発言は容認できない。スポーツ界でも女性登用の機運が高まっているのに「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」などと述べた。時代に逆行するうえ、あらゆる差別を禁じる五輪精神に反した。[br] 発言を撤回して謝罪したが、事態は沈静しなかった。抗議するボランティア辞退者が続出し、大会の協賛企業からも非難の声が上がった。政権やスポーツ界は「あってはならない発言」としながらも、一時は会長続投の擁護に回った。こうした対応は、女性差別を温存させる日本の社会構造に原因がある、とも指摘された。[br] 森発言で被った日本の印象悪化、五輪運動への信頼低下は計り知れない。後任会長には新たな価値観の発信を求めたい。公正で透明性のある組織運営で負のイメージを断ち切ってほしい。[br] コロナ禍の大会の行方は見通せない。首都圏などに出された緊急事態宣言は延長され、各地の医療体制も不安定なままだ。共同通信社の最新の世論調査では「今夏の開催を望む」は14・5%にすぎず、「中止」35・2%、「再延期」47・1%を合わせた今夏の開催に反対する声が80%を超えた。[br] 日本政府、国際オリンピック委員会(IOC)、組織委とも中止・再延期論を否定し、万全の感染対策を施した「安心・安全な大会」の準備を続ける姿勢を示している。「なにがあろうと開催する」とのかたくなさも反発を招いていた。[br] スポーツを通じた世界平和、国際交流を目指す五輪運動の危機である。困難な状況下で五輪・パラリンピックを開く意義を再確認したい。組織委など主催者側は説得力のある材料を示し、開催可否を判断してほしい。[br] 最初の関門は3月25日に開始予定の聖火リレーだろう。開催に向かうならこの時期までに人数制限を含めた観客対応を決める必要がある。緊急事態宣言の解除は必須条件で、遅れている国内のワクチン接種の進展も重要だ。「安心・安全な大会」は選手を守るだけでなく、迎え入れる開催国市民の賛同も得たものでなければならない。