福祉施設と利用者の“橋渡し役”に 「八ネット福祉オンブズマン」活動20余年

利用者の声に耳を傾ける千葉マキ子理事長。解決策などを施設側に提案する=昨年12月、八戸市
利用者の声に耳を傾ける千葉マキ子理事長。解決策などを施設側に提案する=昨年12月、八戸市
福祉施設の利用者の声に耳を傾け、第三者の目線で施設の環境維持や改善を提言する八戸市のNPO法人「八ネット福祉オンブズマン」の活動に視線が注がれている。施設内で不満や不安を抱える利用者に対して定期的にヒアリングをしたり、設備環境をチェックした.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 福祉施設の利用者の声に耳を傾け、第三者の目線で施設の環境維持や改善を提言する八戸市のNPO法人「八ネット福祉オンブズマン」の活動に視線が注がれている。施設内で不満や不安を抱える利用者に対して定期的にヒアリングをしたり、設備環境をチェックしたりして利用者の人権を守り、福祉サービスの向上につなげるのが狙い。同法人の千葉マキ子理事長は「利用者でも施設側でもない客観的な目線でチェックすることが、地域福祉全体の向上になる」と使命感を強くしている。[br][br] 同法人は1999年に設立。元看護師や元介護士、元教員といった専門知識がある人だけでなく、介護経験がある主婦や一般企業の会社員ら約30人がオンブズマンとして活動している。[br][br] 契約する施設を定期的に訪問し、利用者から日々の不安や悩みを聞き取り、その声を基に施設側に改善を提案する、いわば利用者と施設の“橋渡し役”だ。[br][br] 同法人によると、約20年前の設立当初、福祉施設では障害者や認知症者に対し、身体拘束をするケースが少なくなかった。ケアやけが防止のために、やむを得ず行う場合がほとんどだが、時には不要と思われる事例もあったという。[br][br] 同法人はこうした状況を改善しようと活動を開始。「利用者が暴れるのには必ず原因がある。どうしたら収まるのかを一緒に考えることが重要」と千葉理事長。家族がそばにいることで落ち着いた人もいれば、鎮静剤が効果を発揮した人もいるなど、それぞれの状況に合わせた解決策を探すことで、不要な身体拘束をなくすことができた。[br][br] 約20年の活動を経て、拘束事例はほとんどなくなり、今では利用者が生きがいをもって暮らせる環境づくりに力を入れる。[br][br] その一つが、利用者へのヒアリングだ。施設の職員には言いづらいことも、外部の人になら言えることもある。「職員が自分にだけ厳しい」「家族が自分をばかにする」などの不満や、「別な支援施設に行きたい」「昔住んでいた場所に行きたい」といった希望を受け止め、施設側と相談しながら改善や実現に結びつけていく。[br][br] 目的は施設の監視ではなく、問題が起きる前に一緒に解決する協働のようなもので、外部からの助言は、施設側にとってもメリットは大きい。同市の社会福祉法人ぶさん会「ワーク柿の木苑」の工藤徳恭施設長は「施設の中にいるだけでは気付かない点にも気付いてくれるし、利用者だけでなく職員の相談にも耳を傾けてくれて、とても助かっている」と実感を込める。[br][br] 千葉理事長は「介護の場は利用者にとって生活の場。安全も大切だが安心はもっと大切」と強調。これからも利用者に寄り添った活動を続けていくつもりだ。利用者の声に耳を傾ける千葉マキ子理事長。解決策などを施設側に提案する=昨年12月、八戸市