【にぎわい創出の行方 はっち開館10年】(上)アート、子育ての拠点に

開館から10年を迎える「はっち」。来場者の回遊性を高め、中心街ににぎわいを創出することが課題だ=8日、八戸市三日町
開館から10年を迎える「はっち」。来場者の回遊性を高め、中心街ににぎわいを創出することが課題だ=8日、八戸市三日町
「子どもの遊び場として度々活用している。街なかにこういう施設があるのはありがたいですね」。 2月上旬、はっち4階の「こどもはっち」を利用していた八戸市内の30代の主婦は子どもを見守りながらこう話した。地元の木材を使った遊具などを備えるこども.....
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 「子どもの遊び場として度々活用している。街なかにこういう施設があるのはありがたいですね」。[br][br] 2月上旬、はっち4階の「こどもはっち」を利用していた八戸市内の30代の主婦は子どもを見守りながらこう話した。地元の木材を使った遊具などを備えるこどもはっちは乳幼児を対象とした遊び場。子育て世代の立ち寄り場所として定着しており、親同士の情報交換の場にもなっている。[br][br] 一方、帰りはどうするのか尋ねるとこんな答えが返ってきた。「買い物は郊外のスーパーや店ですることがほとんど。あまり中心街では買わないかも」。[br][br]   ■    □[br] 1990年代以降、八戸市中心街では大型店の郊外移転や閉店が相次いだ。衰退を食い止めようと、中心街に市の公共施設を整備する計画が浮上。2005年9月に中村寿文市長(当時)が掲げた「山車会館」の建設構想で議論が本格化した。同10月に市長選で当選した小林眞市長は、より多機能の施設を整備することで中心街の活性化を図る方針にかじを切り、それが11年2月11日にオープンした現在のはっちだ。[br][br] オープン当初、市民から「何をする施設か分からない」との声もあったが、市民の創作活動や発表の場として定着。年間延べ約80万人以上が訪れ、20年12月末時点の累計は約876万人に上る。屋外でのイベントも多く、地域の課題を掘り下げたり、アートを生かした自主事業を立ち上げたりと、市民の文化活動の幅を大きく広げている。[br][br]   □    ■[br] 一方、中心街活性化の“起爆剤”としての効果は鈍い。市などが毎年調査している歩行者通行量を見ると、休日と平日を合わせた2日間の通行量(三日町や十三日町の主要8地点で調査)は11年度は約4万9千人、開館翌年の12年度は“開館バブル”などで約5万8千人と増加したが、13年度は約5万4千人、14年度は約5万8千人など、その後は4万~5万人台で推移。[br][br] 市は、はっちを皮切りにこの10年で「八戸ブックセンター」や八戸まちなか広場「マチニワ」など中心街に次々と施設を整備したが、メインストリートでは空き店舗が目立ち、買い物客は郊外のショッピングセンターなどに奪われているのが現状だ。[br][br] ただ、はっちがなければもっと中心街は衰退していたとの見方もある。市まちづくり文化スポーツ部の原田悦雄部長は「歩行者通行量は開館前までは減少傾向だったが、はっちができたことで一定の下げ止まり効果はあった」と指摘。「全国的にも珍しい施設だが、多くの市民に浸透してきている」と整備の意義を強調する。[br][br] はっちの来館者は、年間80万~90万人で推移しており、開館以降、一定の集客を保っている。ただ、近年の中心街の通行量を見れば、はっちの来場者が、中心街に十分に環流しているとは言い難いのが現状だ。[br][br] 今後は今秋、市庁前にオープンする新美術館などほかの公共施設と連動して、人の流れを街なかにどう環流させ、より経済効果を引き出すかが課題となる。[br][br] 八戸中心商店街連絡協議会の松井正文会長は、はっちは街の拠点として定着しと評価した上で、「われわれも専門店などと協力し合い、回遊性が高まるような魅力を創出していきたい」と強調する。[br][br]   ◇    ◇[br] 八戸市三日町の八戸ポータルミュージアム「はっち」が11日に開館10周年を迎える。多くの来場者が訪れ、アートや子育ての拠点として定着した一方、中心街全体を見れば活性化の道のりは険しい。今後、にぎわいを創出するには何が必要か探る。開館から10年を迎える「はっち」。来場者の回遊性を高め、中心街ににぎわいを創出することが課題だ=8日、八戸市三日町