時評(2月4日)

新型コロナウイルスの第3波は1月前半にピークに達した後、新規感染者が全国的に減少傾向にある。しかし、重症や死者の増加は感染より遅れるため病床逼迫(ひっぱく)は今も続く。治療を受けられないまま亡くなるケースも相次いでいる。国民皆保険や救急医療.....
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 新型コロナウイルスの第3波は1月前半にピークに達した後、新規感染者が全国的に減少傾向にある。しかし、重症や死者の増加は感染より遅れるため病床逼迫(ひっぱく)は今も続く。治療を受けられないまま亡くなるケースも相次いでいる。国民皆保険や救急医療のかつてない危機とさえいえる。[br] 政府は栃木県を除く10都府県の緊急事態宣言を3月7日まで延長した。医療の逼迫が続く現状ではやむを得ない。地域ごとに病院や診療所の連携を進め、コロナを含むすべての患者に良質な医療を提供すべきだ。それが危機に直面する国民皆保険を守る道でもある。[br] 流行は波を伴う。病原体感染と予防対策の相反する力がせめぎ合う現象だからだ。最近は1人の感染者が何人にうつすかを示す実効再生産数が1を切っている。外国で現れた感染力の強い変異株への警戒は必要だが、感染は当面減るとみられる。[br] 感染規模は違うが、緊急事態宣言が初めて発令された昨年4、5月と似た経過をたどっている。首都圏を最後に、感染が減る県から順次解除されるだろう。今回の宣言は前回より緩く、対策も飲食店の営業時間短縮などに絞られた。どの対策が効いたか明確ではないが、限定的な宣言でも一定の効果があった。[br] 宣言は人々を苦境に追い込む副作用が強く、全国一律に広げなかったのは妥当だった。しかし、感染が急拡大した都会では病床不足から入院調整中の患者や自宅療養が急増し、入院できずに亡くなる人が増え続けた。[br] 昨年以降、長引くコロナ流行で必要な通院や健康診断を控える傾向が強まり、人々の健康レベルの低下が懸念される。都会の病院の集中治療室(ICU)がコロナ重症者であふれ、幅広い救命の「最後のとりで」の救急医療が患者受け入れを断る状況にも陥った。[br] 国民皆保険は日本の社会にとって重要な枠組みだ。貧富や年齢の区別なく、誰でもいつでも適切な医療を受けられるのが原則だが、新型コロナの第3波で揺らいだ。政府は緊急事態宣言の延長に際し、最大限の医療支援を進めるべきだ。[br] 医療体制は新興感染症の大流行を想定して、効率優先を改め、病床やスタッフにゆとりを持たせておく必要があった。保健所や行政だけでなく、回復患者の転院受け入れなどで地域の病院は協力してほしい。増えている介護施設などの集団感染対策も重要だ。高齢者向けのワクチン接種にも多くの医療者が参加するよう求めたい。