首都圏との移動手段として、青森県経済を下支えする東北新幹線。観光のみならず、ビジネスや文化など多方面で交流促進に貢献してきた。全線開通から10年の間には、2016年に北海道新幹線(新青森―新函館北斗)が開業。新青森駅は本州の終着地から北の大地への玄関口へと変わった。今後は車両の高速化や札幌延伸を控え、高速交通網は次のステージに突入する。通過点として埋没するのを防ぐため、新たな人の流れを取り込み、いかに交流人口を拡大するかが今後の発展の鍵となる。[br][br] JR東日本盛岡支社によると、八戸駅―新青森駅間の1日当たりの平均利用者は、10年度が8684人だったのに対し、北海道新幹線が開業した16年度以降は1万人を超え、順調に推移している。[br][br] 県は青森空港への国際線就航などに合わせ、鉄路と空路を組み合わせた「立体観光」を展開し、外国人観光客を中心に入り込み客数は増加。周遊の核となる新幹線は、地域振興に欠かせない存在となった。[br][br] さらなる利用促進に向けた整備も進む。JR東日本は今年10月に、東北新幹線盛岡―新青森間で、最高時速を現行の260キロから320キロに引き上げるための工事に着手。また、最高速度360キロでの営業運転を目指す、新型試験車両「ALFA―X(アルファエックス)」の導入に向けた試験走行を重ねる。[br][br] 一方、JR北海道は、札幌―東京間の最速4時間半を目標に、貨物列車と共用する青函トンネル内の高速走行を見据え、取り組みを進めている。高速化や延伸は利便性の向上をもたらすが、都市間の時間や距離が縮まることで、大都市圏に人やモノが集中する「ストロー効果」に拍車が掛かり、地方の衰退につながる懸念もある。[br][br] 青森銀行子会社で、地域経済の調査を手掛ける「あおもり創生パートナーズ」の竹内紀人専務は「吸い上げられるということは吸い取れるということ。県内企業にとっては市場が増え、観光面でもターゲットが広がる」と札幌延伸の利点を強調する。[br][br] 人口減が進む中、県内経済の縮小は避けられないとし、「100万人の仙台市に加え、200万人の札幌市と1時間足らずで結ばれる意味は大きい。両経済圏との交流人口をどう増やすかが鍵だ」と提言する。[br][br] 県は札幌延伸を見据え、県と北海道南地域を圏域とする「津軽海峡交流圏」の形成を推進。青函を一つの経済圏とするべく、観光振興や人材育成で連携を強化。多彩な体験プログラムの創出や、地域振興団体の誕生など、域内の交流促進と域外からの交流人口増加に一定の効果を上げる。[br][br] 県交通政策課の舩木久義課長は「10年間で新幹線を地域振興につなげるため、津軽海峡圏の土台を作ってきた」と述べ、「札幌延伸をプラス効果とするため、交流圏をもう一段階発展させなければならない」との見方を示す。