【連載・東北新幹線全線開通10年】(4)八戸圏域の観光

東北新幹線全線開業で観光客は着実に増えている(写真はコラージュ。左上から時計回りに星野リゾート青森屋、八戸三社大祭、八食センター、奥入瀬渓流)
東北新幹線全線開業で観光客は着実に増えている(写真はコラージュ。左上から時計回りに星野リゾート青森屋、八戸三社大祭、八食センター、奥入瀬渓流)
「八戸駅が途中駅になるとの懸念もあったが、マイナス面はほとんど感じられなかった」 年間250万人以上が訪れる八戸市の八食センター事務局の松橋寛局長は東北新幹線全線開通後の10年をこう振り返る。 八食センターは2002年の八戸駅開業を契機に飲.....
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「八戸駅が途中駅になるとの懸念もあったが、マイナス面はほとんど感じられなかった」[br][br] 年間250万人以上が訪れる八戸市の八食センター事務局の松橋寛局長は東北新幹線全線開通後の10年をこう振り返る。[br][br] 八食センターは2002年の八戸駅開業を契機に飲食棟「厨(くりや)スタジアム」などを整備して規模を拡大。全線開通の10年には過去最高の340万人が訪れた。近年はピーク時から減少傾向にあるものの、青森県内屈指の誘客を誇り、観光客の売り上げが3割前後を占めることも。新青森、七戸十和田という新駅が誕生したことで回遊性が高まり、来場者の維持につながっている。[br][br] この10年はイベントなどのソフト面に注力しており、「新規客を獲得するには定期的なリニューアルが必要」と松橋局長。本年度中に子ども向けの遊び場の改修を予定しており、「常に変化していかなければ」と力を込める。[br][br] 県民が待望していた全線開通は観光面では前途多難な船出となった。11年3月には東日本大震災が発生。同年4月から始まったJRグループの大型観光宣伝企画「青森デスティネーションキャンペーン(DC)」はその効果を十分享受できなかった。[br][br] それでも県の統計によると、全線開業直後の11年の観光入り込み数は3154万人に対し、18年は3501万人と着実に増加。中でも宿泊費や交通費、飲食費などを合わせた観光消費額は1391億円から1902億円と40%近い伸びを示す。全国からの修学旅行の受け入れ人数も10年でほぼ倍増した。[br][br] 青森空港の国際定期便の新規就航や16年3月の北海道新幹線開業など東北新幹線だけが要因とは言い切れない側面はあるが、県観光連盟の高坂幹専務理事は「二つの新駅が誕生したことで個人客が県内を滞在周遊する形の旅行商品が増え、県の魅力が高まった。県全体にとって全線開業の経済効果は大きかった」と分析する。[br][br] 地元産業を巻き込んだ観光の新たな取り組みも出てきた。三沢市の星野リゾート青森屋は「あおもり藍」をしつらえた客室を整備したほか、今月からは十和田きみがらスリッパ生産組合と共同で宿泊者向けのスリッパ制作体験を開始。[br][br] 岡本真吾総支配人は「地域を応援しつつ、一緒になって県内の魅力を宿泊者に伝えていければ」と語る。[br][br] 一方、県全体では通年観光の定着という課題も残る。多彩な祭りや自然など春から秋にかけては強みがあるものの、冬場の観光はまだ弱いのが実情。さらに今年は新型コロナウイルスが観光に追い打ちを掛けた。[br][br] こうした現状に高坂専務は「今こそ観光コンテンツを磨き上げる機会だ」と指摘。来年4~9月に道南エリアも巻き込んで東北DCが始まることから「青函を一つの圏域と捉え、旅行商品の造成などに一層力を入れたい」と意気込む。東北新幹線全線開業で観光客は着実に増えている(写真はコラージュ。左上から時計回りに星野リゾート青森屋、八戸三社大祭、八食センター、奥入瀬渓流)