トランプ米大統領が大統領選での敗北を事実上認め、バイデン新政権への移行手続きがやっと始まった。選挙後の混乱に収拾のめどがついたことをまずは歓迎したい。[br][br] しかし新政権には内外の課題が山積しており、前途は多難だ。最初の100日をどう乗り切るかが焦点となるだろう。[br][br] バイデン次期大統領はトランプ氏の米国第一主義から国際協調主義へ転換する方針を表明しており、同盟国重視の政策として支持したい。[br][br] バイデン氏の取り組む最優先課題は感染が爆発的に拡大している新型コロナウイルス対策だ。感染者が1300万人を超える中、ワクチンの供給などで拡大に歯止めをかけられるかが鍵だ。コロナ禍で悪化した経済の改善も国民の信頼を得るためには重要になる。[br][br] バイデン氏は人種、環境、健康保険問題などにも力を傾注する考えだ。特に気候変動問題を担当する大統領特使にケリー元国務長官を起用、政権発足と同時に温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に復帰する方針を示したのは高く評価したい。[br][br] トランプ氏の対立をあおる政治で深刻化した社会の分断を修復する任務も担っている。選挙で国民のほぼ半数がトランプ支持票だった現実を考えれば、国民の融和と統合の道が厳しいことは明らかだ。[br][br] 公約を実行するためには、何よりも議会との協調が必要だ。下院は与党となる民主党が過半数を維持したが、上院は共和党が既に50議席を確保、未確定の2議席を争う1月の南部ジョージア州の選挙を経て多数派にとどまる可能性が強い。[br][br] そうなれば、政権と上院の間にねじれが生じ、妥協を強いられる。民主党内左派の反発で、苦しい立場に追い込まれることも予想される。共和党上院の指導者マコネル氏とは長年の信頼関係にあるとされ、このパイプが生きるかもしれない。[br][br] 日本にとって最大の関心事はバイデン氏の外交政策だ。「世界を主導していく」と明言しており、米国第一主義から国際協調路線にかじを切れば、世界の安定に寄与することになる。[br][br] バイデン氏は菅義偉首相との電話会談で沖縄県・尖閣諸島への日米安全保障条約の適用に言及して日本側を喜ばせた。しかし今後、防衛分野では日本への分担要求を強める可能性があり、警戒も必要だ。外交の最大課題は何といっても中国との関係改善だろう。菅首相には米中の緊張緩和に向け、積極的な役割を果たすよう求めたい。