天鐘(12月1日)

年を取るほどに月日が流れるのが速い。毎年この時期になると同じことを思うが、今年はその感慨も格別だ。コロナ、コロナで明け暮れ、気が付けば、はや師走である▼残った仕事を片付け、年明けの準備に取りかかる。公私共に気ぜわしく、とても31日間では足り.....
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 年を取るほどに月日が流れるのが速い。毎年この時期になると同じことを思うが、今年はその感慨も格別だ。コロナ、コロナで明け暮れ、気が付けば、はや師走である▼残った仕事を片付け、年明けの準備に取りかかる。公私共に気ぜわしく、とても31日間では足りない一年納めの12月。そんな師走が、たった2日しかなかった年がある。旧暦から新暦へ切り替わった明治5年のことだ▼12月3日をもって明治6年1月1日とする―。時の政府が秋に発したお触れに庶民は驚く。布告から施行までわずか20日余り。暦に基づく季節感が滅茶苦茶だと、世間は大混乱に陥ったらしい▼乱暴な決定の背景にあったのが逼迫する財政だ。翌年に「うるう月」を控え、役人の月給は13カ月分必要だった。悩んだ末に浮かんだのが改暦。12カ月分の支払いで済み、2日間だけの12月分まで“チャラ”にしてしまう荒技だった▼さて、歴史の一ページから1世紀半。コロナ対策で国や地方自治体の台所は今、再び火の車だ。無論暦を改めるわけにもいかず、感染症の不安の中で年の瀬が迫る。慌ただしく過ぎたこの一年を思う▼歳暮を贈り、年賀状を書けば、大掃除という方もいよう。邪気を払い新年に備える。思えばずっと、重くよどんだ空気に包まれてきた。今年ほど汚れを一掃したい年もない。乏しかった季節感を取り戻すために、最後に励むのも悪くない。