天鐘(11月24日)

熊五郎は腕利きの大工だが、無類の大酒飲み。夜遊びが過ぎて、妻子に愛想を尽かされてしまう。独り身になったことを悔いて酒を断つ。仕事に励んで立派な棟梁(とうりょう)に。息子の手引きで夫婦はよりを戻し、幸せに暮らす▼人情噺(ばなし)の「子別れ」は.....
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 熊五郎は腕利きの大工だが、無類の大酒飲み。夜遊びが過ぎて、妻子に愛想を尽かされてしまう。独り身になったことを悔いて酒を断つ。仕事に励んで立派な棟梁(とうりょう)に。息子の手引きで夫婦はよりを戻し、幸せに暮らす▼人情噺(ばなし)の「子別れ」は1時間を超える落語の大作。ハッピーエンドに至る終盤の別題は「子は鎹(かすがい)」。夫婦げんかで気が立っている時、子どもの顔を見てふと我に返る。そんな経験は少なくないけれど…▼最も肝要なのは気持ちを伝え合うことだという。コロナ禍に直面して会話が増え、夫婦仲が良くなったと回答したのは2割。「いい夫婦の日」(11月22日)にちなみ、明治安田生命保険が実施したアンケートに納得する▼家族関係の深化は喜ばしい。一方で危機感を禁じ得ないのは、歯止めが掛からない児童虐待。感染防止の「ステイホーム」は絆を強めたが、孤立と表裏一体でもある。深刻な事態がより潜在化してはいまいか▼「子育てには正解がない」という。だからこそ難しい。家族のかたちは様々だ。だが悲しい事件を伝えるたびに思う。悩みを抱え込まず、誰かと語り合って、前に進むことができたら▼鎹は両端が曲がった大きな釘(くぎ)。木材を頑丈につなげる。その目的を子育てに重ねれば、鎹は夫婦、家族、友人の結び付きだろう。それを行政や地域社会が積極的に支えたい。優しく子どもを守る、より強固な輪になる。