菅義偉政権が求めている携帯電話料金の引き下げは、政府とNTTドコモなど携帯大手各社とのせめぎ合いが大詰めを迎えている。料金引き下げは、菅首相が官房長官時代から力を入れており、26日の所信表明演説でも「できるものからすぐに着手」と改めて強い意欲を示した。[br] 携帯電話は既に生活必需品。本来ならば料金は市場の競争に委ねるべきだが、日本の料金は国際的にみて高く、携帯大手各社の利益率が他業種に比べ高水準にあることが背景にある。[br] 市場は、大手3社による寡占体制が続き、競争原理が十分に働いていないとの指摘は多い。料金・サービスの内容が複雑なほか、他社への乗り換えが簡単にできないようにする顧客の「囲い込み」ともいえる各種慣行が適正な競争を妨げている。[br] 総務省は携帯電話料金引き下げに向けたアクションプラン(行動計画)を公表した。(1)携帯電話会社を乗り換えるメリットや手続きを分かりやすく説明するサイトを年内に開設(2)格安スマートフォン事業者に貸し出す回線使用料を引き下げ(3)契約先を変えても携帯のメールアドレスをそのまま使える仕組みを年度内に検討―などが柱になっている。競争促進で値下げにつなげたい考えだ。[br] 利便性を高めるための行動計画は評価できよう。携帯電話についての知識が不足したり、格安スマホに漠然とした不安感を抱いたりし、乗り換えにちゅうちょする利用者が高齢者を中心に少なくない。携帯各社は行動計画に沿って改革すべきだ。[br] 総務省としては、利用者が乗り換えやすくする環境を整備する一方で、動画視聴者などが主な顧客である大容量プランについては料金の値下げを促している。既にソフトバンクは他社に先駆けて、利用者が多い20ギガ~30ギガバイトの新しい大容量プランで、月額利用料を5千円以下にすることを検討中と表明。NTTドコモの同様のプランに比べ約3割程度安い。KDDIも11月までには新プランを打ち出す見通しだ。[br] 携帯料金の引き下げは企業業績に響くだけに、各社は高速大容量の第5世代(5G)移動体通信システムの基地局投資への悪影響を懸念している。5G基地局網の整備にはかなりの費用がかかるのは確かだが、他社との提携で効率化を目指すなど工夫の余地はある。[br] 5Gは新しい社会基盤だけに、政府としても経済の活性化、国際競争力強化の観点から、値下げとは別に5G投資を支援していくことも求められよう。