天鐘(10月28日)

教育先進国といわれるフィンランドには小学5年生が作った「議論に関する10の決まり」というのがある。話し合いをきちんと成立させるルールで、大人にも通じる内容だ▼初めに「他人の話を遮らない」がある。まず相手の発言を聞く。それから自分の意見を述べ.....
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 教育先進国といわれるフィンランドには小学5年生が作った「議論に関する10の決まり」というのがある。話し合いをきちんと成立させるルールで、大人にも通じる内容だ▼初めに「他人の話を遮らない」がある。まず相手の発言を聞く。それから自分の意見を述べるというのが順番だ。「話すときは相手の目を見る」。そして、「どんな意見も間違いと決めつけない」とも定められている▼大事な決まりを守れない大人がいる。米大統領選の討論会は、候補者2人によるののしり合いになった。特に現職は再三、発言の邪魔をし、注意を受けた。相手を罵倒し、こき下ろす。「史上最悪」の評価も無理はない▼尖(とが)る権力者の言葉に、評論家・清水幾太郎の教えを思い出す。「無闇(むやみ)に烈(はげ)しい言葉を用いると、言葉が相手の心の内部に入り込む前に爆発してしまう」。著書『論文の書き方』の中にある一節だ▼伝えるべき言葉とは本来、静かに相手の心の中に入れて弾けさせるものだと、清水は言う。熱く、過激に放たれるほど、言葉は相手に届かぬ「空砲」で終わるものらしい。今こそ、多くの政治家たちに届けたい箴言(しんげん)である▼大統領選は大詰めだ。かたや、わが国でも新しい首相の下での臨時国会がスタートした。内外共に課題は山積、間違いなく岐路にある。確かな言葉を政治に求めたい。くれぐれも、その「爆発のさせどころ」は誤らぬよう。