【連載・決断の行く末 動き出す高レベル処分地選定】(2)期限

むつ小川原港で荷下ろしされる海外からの返還ガラス固化体=2016年10月、六ケ所村
むつ小川原港で荷下ろしされる海外からの返還ガラス固化体=2016年10月、六ケ所村
フランスから返還されたガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)28本が、六ケ所村の施設に初めて搬入されたのは1995年4月26日。この日が青森県と村、日本原燃が取り交わした安全協定にある「受け入れた日から30~50年間」とする貯蔵期間の起点だ。.....
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 フランスから返還されたガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)28本が、六ケ所村の施設に初めて搬入されたのは1995年4月26日。この日が青森県と村、日本原燃が取り交わした安全協定にある「受け入れた日から30~50年間」とする貯蔵期間の起点だ。[br][br] フランスと英国からの返還は2016年10月までに計18回行われ、村内で保管する返還固化体数は計1830本に上る。高レベル廃棄物の搬出先となる最終処分場の選定は、県民の関心事。行き先がなければ、このまま村に留め置かれかねない。[br][br] 国は、処分地選定までに文献調査2年、概要調査4年、精密調査14年程度を要するとし、さらに処分場建設に10年程度を見込む。処分場完成までに計30年かかることになるが、村に初搬入された固化体の搬出期限まで25年を切っている。国は調査期間を「あくまでも目安」と説明するが、計画は破綻していると言わざるを得ない。[br][br]   ■   □[br] 今年8月以降、北海道2町村の文献調査に前向きな姿勢が報じられた。その1カ月後の9月に開会した県議会定例会では、一部の野党県議が「期限は順守されるのか」という疑念を執行部に突き付けた。[br][br] 県はこれに対し、▽国の「県内を最終処分地としない」とする確約▽電力10社の「貯蔵管理期間終了時点で、最終処分に向けて直ちに(県外に)搬出する」という約束―などを期限順守の担保として挙げた。[br][br] では、期間が満了した時点で処分場が完成していなかった場合、どこに搬出するのか―。[br][br] この問いに対する答えはない。可能性として、使用済み核燃料を生み出す各原発のサイトに返却する手が思い浮かぶが、ある電力関係者は各サイトに受け入れ施設がなく、地元の反発も予想されることから「現実的ではない」ときっぱり否定した。[br][br]   □   ■[br] 海外からの返還分とは別に、六ケ所村の再処理工場が操業すれば、新たな固化体が生み出される。フル稼働で年間約千本に上る。[br][br] 原燃の増田尚宏社長は、新規制基準の審査合格で工事の物量が定まったことから、22年度上期とする工場の完成目標が「今までとは精度が違う」と断言する。[br][br] 核燃料サイクルの要となる再処理工場の完成が現実味を帯び始める一方、処分場選定の手続きは緒に就いたばかりで、このまま順調に進むかは未知数だ。[br][br] 再処理工場が稼働すれば行き場のない固化体が増え続ける。処分場の見通しが立っていない状況で、工場操業は認められるのか。[br][br] 三村申吾知事は、再処理工場の操業時期と処分場の見通しの関係について、10月8日の記者会見で「国が前面に立って進めていくということでしかない」と言及を避けた。[br][br] ただ、ある自民党の県議は当然のことのように語る。「処分場が決まらなければ、サイクルそのものも動かせないだろう」むつ小川原港で荷下ろしされる海外からの返還ガラス固化体=2016年10月、六ケ所村