時評(9月28日)

青森銀行とみちのく銀行の経営統合案が取り沙汰され、金融関係者が行方を注視している。両行頭取は「統合協議に入った事実はない」と否定するが、経営統合を「選択肢の一つ」として可能性は排除していない。 青森県に限らず全国で地銀再編の動きが活発化して.....
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 青森銀行とみちのく銀行の経営統合案が取り沙汰され、金融関係者が行方を注視している。両行頭取は「統合協議に入った事実はない」と否定するが、経営統合を「選択肢の一つ」として可能性は排除していない。[br] 青森県に限らず全国で地銀再編の動きが活発化している。人口減に伴い資金需要が減少し、超低金利で利ざやを稼ぐ従来の収益モデルが限界を迎えているのが要因だ。 [br] 昨年4月に近畿大阪銀行と関西アーバン銀行(ともに大阪市)が合併した。今年10月にはふくおかフィナンシャルグループ傘下の親和銀行(長崎県佐世保市)と十八銀行(長崎市)による十八親和銀行が誕生する。[br] SBIホールディングスは地銀連合による「第4のメガバンク構想」を掲げ、福島銀行(福島市)などと資本提携。みち銀もSBIのグループ企業と外貨関連サービスの分野で提携するなど結び付きを強めている。青銀は岩手銀行、秋田銀行と提携し、経営基盤強化に取り組んできた。[br] 各行があの手この手で生き残る道を模索している中で、青銀とみち銀の経営統合が浮上した。関係者は驚きつつも、現実味を持って受け止めた。両行は昨年10月に「包括的連携に向けた検討」を発表しており、下地があったからだ。長く顧客獲得にしのぎを削ってきたライバル同士が手を取り合わざるを得ない状況が、県内金融環境の厳しさを表していると言える。[br] 統合案には今年11月に施行される、独禁法の適用から地銀を除外する特例法が関係している。法案成立には、当時官房長官だった菅義偉首相が関与したとされる。菅政権が誕生したことで今後、再編の動きが加速する可能性がある。その第1号として青銀、みち銀がターゲットにされたとの見方もできる。[br] だが、再編は中央主導で進むべきものではない。経営統合はあくまでも手段であり、本来の目的は地域金融サービスの維持にあるからだ。[br] 統合すれば人員の削減、店舗の統廃合、システム共用化などで経営が効率化される。一方、地域内では寡占状態となる。利用者に不都合は生じないか。再編で地域の金融サービスの低下を招いてはならない。[br] 欠かせないのは利用者本位の視点だ。コロナ禍で地域経済が縮小し、中小企業に資金を供給する地銀の役割は重要性を増している。待ったなしの財務改善に注力しながら、再編の荒波にどう向き合うか。両行の経営判断が問われている。