【木村かほるさん失踪60年】同期生 再会信じ、校歌の練習励む

木村かほるさんの出迎えの日に披露する校歌の練習に励む、高校の同期生たち=9月中旬、八戸市
木村かほるさんの出迎えの日に披露する校歌の練習に励む、高校の同期生たち=9月中旬、八戸市
北朝鮮に拉致された可能性が高いとされる八戸市出身の木村かほるさん=当時(21)=の帰りを待つのは家族だけではない。青森県立八戸東高の同期生たちも願いは同じだ。同校9回生コーラスの会を2007年に立ち上げ、出迎えの場で校歌を披露するため練習に.....
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 北朝鮮に拉致された可能性が高いとされる八戸市出身の木村かほるさん=当時(21)=の帰りを待つのは家族だけではない。青森県立八戸東高の同期生たちも願いは同じだ。同校9回生コーラスの会を2007年に立ち上げ、出迎えの場で校歌を披露するため練習に励む。今年で82歳となるメンバーたちは、高齢や参加者減少を受け、今夏での解散も考えたが、木村さんとの再会を信じて歩み続ける姉天内みどりさん(87)=同市=の姿に背中を押され、存続を決めた。私たちが諦める訳にはいかない―。決意を歌声に乗せる。[br] 9月中旬、八戸パークホテルの一室から同校の校歌が漏れていた。この日は同期生7人が木村さんを思い、歌声を響かせた。来る“その日”へ向けて始めた練習は14年目を迎えた。[br] 人懐っこい笑顔に、包み込むような優しさが印象的だったという木村さん。立派な看護師になるのだろうと誰もが思った。「困ってる人を見かけると、助けずにはいられない性格」と同期生は口をそろえる。朗らかな笑みは、それぞれの思い出の中に今も残る。[br] 木村さんの報道に触れるたび、姉の天内さんが奔走する姿を目にし、気に掛けてきた。そして、03年に同期生たちも立ち上がった。失踪に拉致の疑いがあることを伝えるため「さくら会」を設立。その活動の一環としてコーラス隊を結成した。[br] 木村さんの学年は、特に合唱に力を入れていたといい、同コーラスの代表を務める沢田京子さん(81)は「自分たちにしか、できないことだと思った」と振り返る。これまでに、チャリティーコンサートを開催し、母校の音楽部の定期演奏会に出演するなど、拉致問題の解決を歌声で訴えてきた。[br] 「妹のために頑張ってくれるメンバーにいつも力をもらう。感謝してもし切れない」。この日の練習を見守った天内さんは、その歌声をじっと聞き、目頭をハンカチで抑えた。[br] 同期生たちを動かすのは、離れ離れとなった姉妹の絆を取り戻したいという思いだ。全員が幼少期に戦争を経験し、戦後の混乱を知る。北朝鮮から姉妹2人で手をつないで引き揚げ、ようやくつかんだ幸せな日々を突然失った悲しみが、痛いほど分かった。[br] 「もう一度、切り裂かれた2人の手をつながせる。できる限りのことを、これからもしていきたい」。姉妹の再会は天内さんばかりでなく、全員の願いだ。木村かほるさんの出迎えの日に披露する校歌の練習に励む、高校の同期生たち=9月中旬、八戸市