犯人を処罰する刑法があるのに、なぜ未成年の場合には別に刑事罰の特則や保護処分などを定める少年法が制定されたのか。改正も立法目的にさかのぼって考えるのが妥当ではないか。[br] 民法上の成人年齢が20歳から18歳に引き下げられる2022年4月をにらみ、法制審議会の部会が、18~19歳を中間層として上下の世代とは異なる扱いをすべきだとの案をまとめた。[br] 少年法の特性は、成長途中で未成熟な少年には健全育成が大切とする保護主義の理念に立ち、教育・指導で改善更生・社会復帰を目指すことにある。再犯を防げるとともに、社会的利益にもなる。[br] そのため刑事裁判を行う地裁とは別に家裁の関与が定められ、生活環境などを調べる調査官ら専門職員が配置された。矯正施設も成人の刑務所や拘置所などとは別に少年院や少年鑑別所などが置かれている。[br] 部会案は自民・公明の与党合意を受け、少年法の適用年齢について現行の20歳未満を維持する一方、改正事項として18~19歳にはその前後の年齢層とは異なる取り扱いを求めた。[br] 全事件を検察官から家裁へ送るのも現状通りだが、その後、家裁が重大事件を検察官へ送り返す「逆送」原則を広げ、現行の殺人と傷害致死のほかに強盗などを追加。厳罰化が強まる。[br] また実名報道は18~19歳の重罪に限って起訴後に解禁すべきだとした。だが実名が報道されれば復学の道が閉ざされかねない。就職や進学にも影響する。[br] 部会委員の共通認識は現行制度が有効に機能しているというものだ。その機能を発展させる改正でありたい。 少年非行は貧困や両親の不仲など社会的に恵まれない家庭環境が背景にある場合が多い。非行の責任を少年だけに負わせるわけにはいかない。[br] 家裁に協力して教育的措置の役割を担うNPOがある。少年友の会だ。東京から全ての家裁に広がり、全国組織は10月に発足10周年を迎える。[br] 会員は調停委員が多く、少年の合宿研修のほか高齢者施設での社会奉仕、公園を清掃する地域美化などの活動を続けている。更生した元少年から感謝の手紙が届くこともあるという。最近の少年事件減少は多様な支援の成果とも言える。それを尊重しつつ将来の姿を考えたい。[br] 部会案は来月にも正式承認され、法務省が来年の国会へ改正法案を提出する予定だ。しかし民法と年齢をそろえるのを口実に重罰化を図る改正であってはならない。