新型コロナウイルス感染症は大都市で急拡大し、1日当たりの新規感染者は連日千人を大きく超えて過去最多を更新した。流行は7月初めに東京など首都圏で目立ち始め、7月下旬に大阪府や愛知、福岡、沖縄県で急加速した。最も怖い感染爆発が懸念される事態を迎えた。[br] 症状が明白な患者にPCR検査を絞り込んでいた4月の第1波と比べ、最近は無症状まで広げて検査している。これも一因となって感染者は増え続けている。若い20~30代が3分の2を占めて無症状や軽症が多いが、次第に高齢者にうつり、重症者がじわりと増えている。[br] 予防と治療の強化に尽きる。東京や大阪などで飲食店の営業短縮や多人数の会食自粛を要請する動きも出た。流行状況を説明し「感染しない感染させない」行動を促すしかない。今、人の移動を活発にする観光支援事業「Go To トラベル」は見直した方がよい。[br] しかし4、5月の緊急事態宣言の規制を繰り返すのは避けたい。人との接触が多い店や小劇場などは感染しやすいが野球やサッカー、大相撲の観戦は予防策を徹底すればリスクをかなり減らせる。どこに感染の危険があるかを見極めるべきだ。[br] 社会経済活動をできる限り維持しながら感染拡大を抑えるには、具体的な危険を察知してメリハリの利いた対応が望ましい。自由な移動や集まりは人間本来の欲求といえる。緊急事態宣言に頼らなくてもよいような持続可能な戦略を探りたい。[br] PCR検査は増えたが、欧米よりまだ1桁少ない。検査した人のうち感染者が占める割合の陽性率は増え続けており、検査が不十分なことが分かる。政府は費用を補助して検査をもっと受けやすいようにすべきだ。[br] 確認される感染者は今も氷山の一角だ。検査の拡充で数は増えるが、無症状を掘り起こせば予防や早期治療につながる。無症状感染者は宿泊施設や自宅で療養してもらい、軽症や中等症、重症者はそれぞれ受け入れ病院に振り分けることができる。[br] 重症者は医療現場が切迫した4月末の4分の1にとどまる。重症者を増やさず医療崩壊させないことが鍵を握る。既存の抗ウイルス薬や抗炎症剤も使えるようになった。救命治療の努力、改善に期待したい。[br] 新型コロナが侵入して半年以上が過ぎ、日本は多くの教訓を得た。医療機関はコロナ診療でどこも深刻な経営難に陥っている。ちぐはぐな政策を改め、検査と治療体制に予算を投入して病院などを支援すべきだ。