天鐘(6月10日)

居酒屋で注文する魚は決まって刺し身。そんな友人がいる。焼きや煮付けも大好きなのに、なぜ避けるのか。内陸の“海なし県”の出身。家庭で魚を食べる機会が少なかった。小骨を取り除くのに難儀してしまう▼小欄はイワシで育った。焼き、みぞれ煮が定番だった.....
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 居酒屋で注文する魚は決まって刺し身。そんな友人がいる。焼きや煮付けも大好きなのに、なぜ避けるのか。内陸の“海なし県”の出身。家庭で魚を食べる機会が少なかった。小骨を取り除くのに難儀してしまう▼小欄はイワシで育った。焼き、みぞれ煮が定番だった記憶がある。多いときは5匹がノルマ。丁寧に身を剝がして口に運び、残った骨はあぶってカリカリのおやつに。おかげで箸使いは人並み、体は頑丈になった▼時は1970~80年代の“マイワシバブル”。ピーク時の水揚げは450万トンにも達した。2019年の全魚種の総量を上回る規模というから驚く。安価な大衆魚が頻繁に食卓に並んだのも納得である▼90年代に入ると、水揚げは一転して急減。高級魚を通り越して、幻の魚になりかけた。築地で1匹1200円の高値をたたき出して話題に。クロマグロと張り合うように、回転ずしでは金色の皿に盛られた▼近年は再び急増。反比例してスルメイカが不振を極める。主因とされるのが、数十年周期で海洋環境が変化する「レジーム・シフト」。全容解明を目指す研究が進むものの、極端な魚種変動に水産都市・八戸があえぐ▼暦が梅雨を告げた。美味とされる「入梅イワシ」が出回る時期だ。いずれ八戸港からも便りが届くだろう。海の恵みは有り難くいただく。ただ、喉に刺さった小骨のように、ハマの将来が気になる。