天鐘(5月21日)

模範とされる親孝行の逸話を集めた古代中国の「二十四孝」。登場人物の一人である後漢の知将・陸績は、若くして没したものの博学多才。天文学の知識を生かして最新の暦をつくり、『易経』の注釈書を著した▼6歳の時に父とともに将軍に謁見(えっけん)。茶菓.....
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 模範とされる親孝行の逸話を集めた古代中国の「二十四孝」。登場人物の一人である後漢の知将・陸績は、若くして没したものの博学多才。天文学の知識を生かして最新の暦をつくり、『易経』の注釈書を著した▼6歳の時に父とともに将軍に謁見(えっけん)。茶菓子として出された蜜柑(みかん)(橘=たちばな)を袖の下に隠して持ち帰ろうとしたが、見つかってしまう。とがめられると「母上に差し上げたかったのです」。時の権力者を感嘆させた▼その徳にちなんで命名されたという。田中舘愛橘(あいきつ)博士は二戸市出身の名誉市民。かつて「科学技術立国」と称賛された日本の礎を築いた偉人。多大な業績は昨日の文化面にも詳しい。68年前のきょう、大往生を遂げた▼ユネスコの前身、国際連盟知的協力委員会の一員としても精力的に活動。国際会議への出席は68回を数え、キュリー夫人、アインシュタイン、レントゲンらと交こう誼ぎを結ぶ。「地球を回り続けた科学者」と呼ばれた▼〈柳は緑 花は紅〉。“学術外交官”は故事成語を引き合いに、国際協調の意義を説いたという。言葉、宗教、文化の違いを受け入れ、尊重しつつ、利害の対立を乗り越える―。「四海同胞主義」を貫いた▼瞬く間に世界を覆った感染症が、国際社会の信頼と連帯を試している。WHO年次総会でも揺らぎは明らか。自国第一主義が勢いを増し、分断が加速する気配である。博士の精神はもはや夢想なのか。