天鐘(3月28日)

欧州人が大規模航海に動き出した15世紀以降。アメリカ大陸に到達し、先住民を征服して人口を激減させた出来事はよく知られている。多くの命を奪ったのは武器だったが、さらに夥(おびただ)しい命を奪った他の要因があった▼それは目に見えないもの、欧州人.....
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 欧州人が大規模航海に動き出した15世紀以降。アメリカ大陸に到達し、先住民を征服して人口を激減させた出来事はよく知られている。多くの命を奪ったのは武器だったが、さらに夥(おびただ)しい命を奪った他の要因があった▼それは目に見えないもの、欧州人が持ち込んだ病原菌だったという。彼らも意図したわけでなく、無意識の所業。自分の体が媒体になっただけだった。米国の生理学者ジャレド・ダイアモンド氏のベストセラー『銃・病原菌・鉄』に詳述されている▼先住民は、欧州人に出会うまで「ユーラシア大陸の病原菌にさらされたことがなかった。それらに対する免疫を持っていなかった」。天然痘やチフス、インフルエンザ、ペストなどに次々と襲われていったと記す▼人類が未知の病原菌と遭遇した時の恐怖と惨事を今に伝える。従来の免疫力が効かず、大流行になす術もない。現代なら予防策と治療薬があるが、確立してもすぐ新たな病原菌が出現する。その繰り返しだ▼新型コロナウイルスも歴史の流れの一つになるのだろう。「人類はウイルスに打ち勝つ」。東京五輪・パラリンピック延期で発した政府の言葉が奢りのように聞こえた▼ウイルスは打ち勝つものではなく、むしろ人類も作る側になっているかもしれないと疑った方がいい。生活形態の変化がウイルスを誘発する原因になっていないか。謙虚に向き合うのも必要だろう。