新型コロナウイルス感染症での入国制限を巡って日韓が対立した。国境を超えて感染症が拡大し続けている中、互いに反発し合っているときではない。[br] 日本は、新型コロナの対応で中国や韓国からの入国制限措置として、発行済み査証(ビザ)を無効とし、韓国、香港、マカオに観光目的など90日以内の短期滞在で認めていたビザの免除も停止した。[br] これに対し韓国政府は、直ちに抗議し、対抗措置として、日本人の短期滞在にはビザを免除してきた制度と、既に発行されたビザの効力を停止した。[br] 康京和外相は、冨田浩司駐韓日本大使に抗議し、防疫措置の撤回を要求した。韓国外務省は「防疫とは別の意図があるのではないかと疑わざるを得ない」と反発した。[br] 韓国からの入国制限措置を取る国・地域は、日本政府が入国制限措置を表明した時点でも既に100を超えていた。だが韓国政府は、日韓関係の悪化を背景に、日本側の措置には政治色を帯びたものがあるとみる。[br] 日本側は「感染を防止し、国民を守るための制限だ」としている。ただ菅義偉官房長官は、入国制限強化について政府の専門家会議での協議を経ていなかったと明らかにした。[br] 中国に対する入国制限に関しては「日本国内でまん延しているこのタイミングでの実施は、ちぐはぐな感じがして疑問だ」と指摘する専門家もいる。[br] 中国は韓国とは異なり、日本の入国制限措置に理解を示した。日本側が事前に中国側と緊密な協議をしていたためとみられる。これに対し、韓国側との意思疎通は十分ではなかったのではないか。[br] 元徴用工問題などを抱える日韓だが、文在寅政権は日韓協力の分野は切り離して対応してきた。今回の日本政府の措置はこれに冷や水を浴びせた。関係悪化は経済にも影響しかねない。[br] 世界保健機関(WHO)の幹部は、日韓に対し政治的な争いは必要なく感染拡大の阻止に集中すべきだと忠告する。[br] 日中韓にはさまざまな分野で対話の枠組みがある。昨年末には保健相会合が開かれ、感染症対策や各国が直面する高齢化への対応などについて連携の強化を確認していた。また2月の日韓外相会談は、新型コロナ対応での協力で一致している。こうした協議が生かされていないのは残念だ。[br] 北朝鮮に対し、連携し合う日韓だ。新型コロナの脅威にも、相互不信を乗り越えて取り組んでいくべきだ。