日本国内での新型コロナウイルス感染症の拡大に依然として歯止めがかからない中、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案が13日に成立する見通しだ。政府は全国の小中高校などに臨時休校を要請したほか、中韓両国からの入国を制限するなど感染拡大防止に躍起だ。いずれも安倍晋三首相が独断に近い形で主導した措置だが、教育現場などには混乱も広がり、効果を疑問視する見方も根強い。[br] 新型インフルエンザ等対策特措法は民主党政権時代の2012年に成立した。改正案は適用対象に新型コロナウイルスを追加する暫定措置で、政府は適用期間を当面、1年間としている。首相が同法に基づく「緊急事態」を宣言した場合、都道府県知事は学校や映画館、スポーツなどの公共施設の使用制限を要請し、応じない場合は「指示」することも可能になる。[br] 政府の裁量で強権を発動し、私権を制限することが可能となる措置への懸念もある。例えば、臨時の医療施設開設のため一定の条件で土地、建物を所有者の同意なく強制使用することや、医療品などの所有者が売り渡しに応じない場合に収用することも許容される。[br] 安倍首相は「国家的な危機にあっては与党も野党もない」として、野党各党にも協力を要請。私権制限という重大な要件を含む法案をスピード成立させることとなった。[br] 政府は、今は緊急事態宣言を出す状況にはないとの立場だ。世界保健機関(WHO)は「パンデミック(世界的大流行)と表現できる」と表明したが、いかなる場合に発動するのかは慎重な判断と丁寧な説明が不可欠だ。与野党は緊急事態宣言は国会に事前報告するとの付帯決議を衆院で可決した。特措法が適切に運用されるよう与野党には政府を厳しく監視していく責任がある。[br] 政府のこれまでの一連の措置については「後手後手」「場当たり的」との批判がつきまとう。ただ、前例がない事態に遭遇し、対応がある程度混乱するのは避けられない場合もある。[br] 非常時に直面した場合、事態を乗り切るために適切な政治決断を下すことが為政者には求められる。今の状況は間違いなく非常時であり、安倍首相は臨時休校要請、特措法改正、中韓両国からの入国規制を決断した。[br] 一連の措置が果たして適切で効果的だったのか。決断の時機を逸していなかったか。いずれ綿密な検証が必要となる。当然のことながら結果責任は安倍首相が負わなくてはならない。