時評(2月13日)

トランプ米政権は「使える核兵器」と称される新型の小型核弾頭搭載の弾道ミサイルを潜水艦に実戦配備した。しかし、この配備は核使用のハードルを下げ、軍拡競争を激化させる懸念があり、強く反対する。 日本政府は唯一の被爆国として、こうした核軍縮に逆行.....
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 トランプ米政権は「使える核兵器」と称される新型の小型核弾頭搭載の弾道ミサイルを潜水艦に実戦配備した。しかし、この配備は核使用のハードルを下げ、軍拡競争を激化させる懸念があり、強く反対する。[br] 日本政府は唯一の被爆国として、こうした核軍縮に逆行するような動きに異を唱え、「核なき世界」実現のため指導力を発揮する責任があることをかみしめるべきだ。 低出力の小型核弾頭は爆発力を抑え、局地攻撃などを想定してブッシュ(子)政権から開発が始まった。現行の核弾頭の爆発規模は約100キロトンだが、小型弾頭は約5~7キロトン。広島に投下された原爆が16キロトンとされている。[br] 米国は空中発射の小型核爆弾は保有していたが、ロシアの防空システムに阻止される可能性があるため、潜水艦発射の低出力弾頭が必要になったといわれ、オハイオ級原子力潜水艦に順次配備される見通しだ。[br] 国防総省高官は配備理由について「あらゆる脅威に対処できる」と抑止力の強化を主張している。だが、元当局者や専門家からは「大統領が核使用の誘惑にかられる」「発射された時、敵が小型核かどうか識別できず、全面核戦争のリスクが増大する」などと懸念の声が上がっている。[br] 米元国務長官らは2年前、上院に書簡を送り「核戦争の入り口」になると反対を表明したが、トランプ政権はこうした批判を押し切った。一部には小型核配備の真の狙いが「対ロシアではなく、イランや北朝鮮に対して使える核兵器を保有すること」との見方もあり、米国との軍事的緊張が高まるようなことがあれば、小型核による先制攻撃が現実味を帯びかねない。[br] 懸念されるのは、同政権が「大国間競争」と位置付ける米中ロの軍拡競争が一段と激化する恐れがあることだ。冷戦終結の一助となった米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約が昨年失効し、残る新戦略兵器削減条約(新START)も来年には期限切れとなるが、延長の見通しは不透明。このままでは中国を含め、際限なき軍拡が進み、軍縮の道が閉ざされてしまう。[br] 今年は広島、長崎の被爆から75年、核拡散防止条約(NPT)発効から半世紀の節目に当たる。しかし、条約で核保有国に課された「核軍縮」は進まず、北朝鮮など保有国が増えた。[br] 被爆国である日本には核軍縮推進の責務がある。4月のNPT再検討会議で主導権を発揮するよう安倍政権に求めたい。