菅政権内で10日、東京五輪・パラリンピック後の9月の衆院解散論が有力となった。立憲民主党の枝野幸男代表が内閣不信任決議案の提出見送り方針を表明。これを受け、今国会中(会期末6月16日)の解散は困難との見方が広がった。新型コロナウイルス感染を抑えられず、菅義偉首相が緊急事態宣言を延長する現状で、解散・総選挙に踏み切れば国民の批判は必至と警戒。首相はこれまで9月30日の自民党総裁任期満了前の解散に言及していた。[br][br] 枝野氏は不信任案に関し、感染状況を踏まえ「提出したら解散すると(自民は)明言しているので提出できない。解散できる状況ではない」と記者団に述べた。[br][br] 政権内で強まる9月解散論は五輪の予定通りの実施が前提。同5日のパラリンピック閉幕後に臨時国会で解散する日程が想定される。首相が総裁選前の解散を探るのは、衆院選で与党が勝利すれば、総裁再選を確実にできるとの思惑がある。[br][br] 首相は昨年9月の就任以来、コロナ収束を最優先に掲げてきたが、5月に入っても沈静化せず、ワクチン接種もなかなか進まない。自民党執行部の一人は「解散は常識の裏をかくものだが、今は踏み切れない」とみる。[br][br] 別の幹部も「コロナが収まらない中で解散すれば、国民から『命よりも政局か』と必ずたたかれる」と指摘。10月21日の衆院議員任期満了を見据え、五輪開催の余勢を駆った「9月解散、10月投開票」を支持する。この場合、総裁任期を短期間延長するため党の内規の改定が必要となる。[br][br] 一方、党内には任期満了間際の「追い込まれ解散」は避けるべきだとの声も残る。ベテラン議員は「全てはワクチン接種の進捗(しんちょく)次第だ。パラリンピックの閉会を待つとは限らない」と語る。[br][br] 二階俊博幹事長は記者会見で、解散時期に関し「政治は刻一刻、変化していく。解散がいつあるか、一寸先は分からない」と話した。[br][br] 枝野氏に加え、立民の蓮舫代表代行や共産党の小池晃書記局長も不信任案提出に否定的な考えを示した。自民党幹部は「不信任案が出ないなら今国会で解散する大義はない」と述べた。