【緊急事態宣言延長】首相、対策緩和で妥協 ちぐはぐ対応に疑問符

 緊急事態宣言を巡る菅首相の主な発言など
 緊急事態宣言を巡る菅首相の主な発言など
菅義偉首相が新型コロナウイルス緊急事態宣言の延長に追い込まれた。7月開幕の東京五輪を意識し5月11日まででの解除を目指したが、強い措置を続けるよう訴える東京都や大阪府の要求を受け一転、延長やむなしに傾いた。経済への打撃を憂慮し、対策の一部緩.....
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 菅義偉首相が新型コロナウイルス緊急事態宣言の延長に追い込まれた。7月開幕の東京五輪を意識し5月11日まででの解除を目指したが、強い措置を続けるよう訴える東京都や大阪府の要求を受け一転、延長やむなしに傾いた。経済への打撃を憂慮し、対策の一部緩和へ踏み切ることで妥協。だが措置を弱めて期限の5月末までに感染を抑えられるのか―。首相対応のちぐはぐさを疑問視する声が渦巻いた。舞台裏を検証した。[br][br] ▽崩 壊[br] 「もう少し傾向をみたい」。5月初旬。宣言延長を巡り「早めに判断した方が良い」と促す関係者に、首相はいら立ちを隠さずにこう反論した。[br][br] 11日の期限ぎりぎりまで見極め、10日の記者会見で解除を打ち出す―。首相が大型連休前に描いていたシナリオだが、この時点で崩壊が始まっていた。大阪府の1日の感染者は、過去最多の1262人に達していた。[br][br] まず動いたのは、延長が念頭にあった吉村洋文府知事だった。政府との水面下の協議で「事業者の協力があれば、変異株のさらなる流行は抑えられる」と高官を説得。首相も「少なくとも大阪の延長は不可避」(官邸幹部)と判断し、関係閣僚会合を5日にセットするよう事務方に指示した。[br][br] だが首相と大阪などの間には、延長の中身に関し、すれ違いが生じていた。吉村氏は百貨店など大型商業施設への休業要請といった厳しい措置の継続が必要だとの立場。小池百合子都知事も同調していた。政権幹部は「延長するにしても、営業時間短縮など1月発令の前回宣言並みに戻すべきだ。そのままはあり得ない」と、経済重視の首相の本音を解説した。[br][br] ▽異 例[br] 5日の閣僚会合は延長の方向性確認にとどまったが、翌6日は約2時間の異例の長さに及んだ。政府筋は延長や愛知、福岡両県の追加は早々に決まったとした上で「対策の中身で紛糾した」と明かす。吉村氏らと同様、強い措置の継続が不可欠との意見が出たからだ。[br][br] だが首相は「(強い措置は大型連休限定の)短期集中だと言ってきた」として対策緩和にこだわった。百貨店は時短とする代わりに、酒類提供の飲食店は休業を続ける「折衷案」で押し切った。[br][br] 5月末までとした延長期限を巡っては、五輪の日程が頭にあった。大会組織委員会などは、観客数上限を6月に決める方針を確認しており、官邸筋は「6月に差し掛かれば、観客動員に影響しかねない」と説明した。[br][br] ▽警 鐘[br] 「首相裁定」には大きな波紋が広がった。百貨店などへの休業要請を続けるかどうか、地域ごとに判断できる「玉虫色」の決着となったためだ。都と大阪府は引き続き休業を求める一方、京都府と兵庫県は土日に限定するとして、4都府県の方針が割れた。[br][br] 一貫性を欠く対応は国民の混乱を招きかねず、都幹部は「緩んでもいいという間違ったメッセージになる。感染が再拡大すれば、国の責任だ」と危機感を吐露した。[br][br] 強い措置の全面維持に期待した小池氏は、政府判断に「何のための延長なのか」と落胆した様子を周囲に見せた。大阪府幹部は「国が緩和にかじを切ったと知った時には驚いた」と戸惑いを隠さない。[br][br] 専門家でつくる政府の基本的対処方針分科会メンバーの釜萢敏・日本医師会常任理事はこう警鐘を鳴らした。[br][br] 「緩和が前面に出ることを非常に危惧する」 緊急事態宣言を巡る菅首相の主な発言など