日本人の2人に1人はかかるとされるがんを誰にでも降りかかる“災害”と捉え、備えるための「がん防災マニュアル」を元患者らの団体が作成し、無料配布している。病気の基礎知識や、治療と仕事の両立に役立つ情報を収録。乳がん経験者で団体の副理事長を務める野北まどかさん(49)は「いざという時のため、一家に1冊置いてほしい」と訴えている。[br][br] 団体は元患者やカウンセラーらでつくる一般社団法人「がんと働く応援団」。「がん防災」という言葉は地震などの自然災害と同様に、自分や家族が診断された時のために日頃から備えてほしいとの意味で、マニュアルを監修した宮崎善仁会病院(宮崎市)の押川勝太郎医師が提唱している。[br][br] マニュアルでは、告知後の心構えや医療費の助成制度など、患者が知りたい情報を紹介。治療開始前に退職してしまう人も少なくないため、「治療中も仕事を継続できる人が多いので慌てないで」と呼び掛ける。[br][br] 卵巣がんの元患者で、団体代表理事の吉田ゆりさん(39)は「辞める以外に選択肢があることを知ってもらい、がんによる離職を防ぎたい」と力を込める。[br][br] 団体は3月にクラウドファンディングで資金集めを開始。目標額の20万円を大きく上回る66万円が集まった。最初に作成した6千部は4月の配布開始直後になくなり、増刷した。[br][br] 「医療者だけでなく、サバイバーの視点が盛り込まれた実践的な内容になった。忙しい人にもぱらぱらと見てほしい」と野北さん。申し込みは団体のホームページから。紙の冊子は1セット3冊は無料で、それ以上は有料。PDFのデータ版も用意している。