時評(4月26日)

岩手県教委が、2020年度内に予定していた県立高校再編計画後期計画(21~25年度)の策定を見送った。2月に示した最終案に対し、二戸など統合対象校のある地域で存続を求める声が上がり、計画策定を持ち越す異例の判断となった。 後期計画の策定作業.....
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 岩手県教委が、2020年度内に予定していた県立高校再編計画後期計画(21~25年度)の策定を見送った。2月に示した最終案に対し、二戸など統合対象校のある地域で存続を求める声が上がり、計画策定を持ち越す異例の判断となった。[br][br] 後期計画の策定作業は17年度から開始。地域検討会議や意見交換会の開催などを経て、20年2月に素案を公表した。県北地方では、工業系の福岡工と総合学科を有する一戸を24年度に統合する案が盛り込まれた。[br][br] これに対し、福岡工の卒業生や二戸市内の団体などが存続を求めて動きだした。20年12月には、同窓会や市など計6団体が単独校での存続を求める要望書を県教委に提出。しかし、福岡工と一戸の統合方針は最終案でも変わらなかった。[br][br] そこで、3月には福岡工同窓会や二戸の産業関係者らが新たに「県立福岡工業高を守る会」を設立。同様に統合方針が示された他地域の団体と足並みをそろえ、県議会に「丁寧な説明と慎重な協議を求める請願」を提出した。請願は不採択となったものの、これらの動きが結果として20年度内の計画策定に待ったをかけた形となった。[br][br] 県教委は、地域検討会議や意見交換会を通じて議論を尽くしてきたとしている。しかし、住民の要望活動は最終案公表後という土壇場で活発化しており、住民への事前の説明が不足していたことは明らかだ。[br][br] 地域の高校を統合するという重大な計画だけに、より良い教育環境を整備するための具体的な将来像を、住民にしっかりと提示する必要がある。[br][br] 岩手の高校再編は、他県と比べても相当慎重に進められている印象がある。前期計画(16~20年度)は学級減が中心で、計画期間内に実際に統合されたのは宮古工と宮古商のみだった。[br][br] しかし、生徒数の減少に歯止めはかからず、学級減中心の対応は限界を迎えつつある。二戸ブロックの場合、中学校卒業者数は20年の422人に対し、15年後の35年に257人にまで減少する見込み。40人学級で4学級分に相当する。生徒数の減少傾向は他地域も同様で、後期計画では統合が避けて通れない状況になりそうだ。[br][br] 4月下旬からは、二戸を含む4ブロックで最終案の説明会が順次開かれる。計画策定ありきにせず、あらためて住民に内容を説明する機会を設けた点は評価できる。地元の高校の存続を願う住民と真摯(しんし)に向き合い、いま一度、丁寧な説明と十分な議論を尽くしてほしい。