【大阪府が宣言要請へ】まん延防止限界露呈 焦る政権、東京に危機感

 新型コロナウイルス感染者数の推移
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大阪府が新型コロナウイルス緊急事態宣言発令を政府に要請せざるを得ない事態に追い込まれた。兵庫県も同調。東京都は可否を近く判断する見通しだ。改正特別措置法で新設した「まん延防止等重点措置」の限界が露呈した形で、地方は感染拡大が止まらない状況に.....
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 大阪府が新型コロナウイルス緊急事態宣言発令を政府に要請せざるを得ない事態に追い込まれた。兵庫県も同調。東京都は可否を近く判断する見通しだ。改正特別措置法で新設した「まん延防止等重点措置」の限界が露呈した形で、地方は感染拡大が止まらない状況に悲鳴を上げる。3度目の宣言発動を極力避けたい菅政権の焦りは募るばかり。五輪開幕まで100日を切った東京都にも危機感が漂う。[br][br] ▽期待外れ[br] 「極めて危機感を持って対応している」。菅義偉首相は19日、感染拡大が続く大阪府に宣言を出すかどうか記者団に問われ、こう強調した。[br][br] そもそも重点措置を設けたのは、宣言発令に至らないようにする「歯止め」が狙いだった。大阪への適用は5日。官邸内では先週時点で「15日ごろから効果が緩やかに表れるはずだ」(政府筋)と見る向きもあった。だが感染者数は、他の曜日に比べて少ない傾向がある日曜日の18日に過去最多の1219人に達した。「期待外れ」の状況に、楽観ムードは消えつつある。[br][br] ただ官邸側には「自治体は可能な最大限の対策をしていない」(首相周辺)ように映る。官邸幹部は「見回りによる飲食店の営業時間短縮の徹底や、深夜に屋外でマスクを着けず飲酒する若者らへの呼び掛けが不十分なのではないか」とみる。宣言を余儀なくされれば「批判を浴びるのは結局、政府だ」(官邸筋)との思いが背景にある。[br][br] ▽欠陥[br] 政権は飲食店の時短営業を重点措置の中核と位置付けてきた。大阪府の吉村洋文知事は「宣言と同等」(西村康稔経済再生担当相)の効果を期待したが、感染経路は既に飲食店以外にも多様化。学校や職場でクラスター(感染者集団)の発生が相次いだ。大阪市内の人出は府の想定より減らず、「自粛疲れ」もうかがわれた。[br][br] 重点措置は宣言と異なり、休業要請ができない。府幹部は「飲食店の時短だけでは、もはや抑え込めない」と指摘。別の府幹部は「結果が出ていない以上、重点措置には欠陥がある。ここまで増えるとコントロールが利かない」と嘆いた。[br][br] 感染「第3波」で、大阪府に出した宣言は3月1日に解除。その2~3週間後から感染者が急増した。専門家は「解除要請に言及した段階で人が動きだし、感染が広がり始めていた」と分析する。現在、感染力が強い変異株が感染者の7割を超えたと推測されている。[br][br] ▽ジレンマ[br] 東京都庁でも重苦しいムードが覆いつつある。[br][br] 「大阪と同じような状況になってもおかしくない」。幹部はうめいた。小池百合子知事は18日も登庁し、夜まで幹部らと対応を協議。帰り際に記者団の質問に応じ「今は先手先手の対応が不可欠だ」と語った。[br][br] 小池氏を先頭に五輪開催の準備を進めてきた東京。ここで宣言が出れば大会への懐疑論が勢いを増しかねないが、見送られても感染者増を抑え得る強い手段は他に見当たらないというジレンマに陥っている。[br][br] 専門家で構成する政府の基本的対処方針分科会のメンバーからも大阪府への宣言発令について「政治の決断が必要な時期が迫っている」との声が出始めた。舘田一博東邦大教授(感染症学)は東京の感染状況に関し、こう警告した。「感染抑制の傾向は見られない。今後どうなるか、この1週間が大事になる」 新型コロナウイルス感染者数の推移