多発する自然災害や猛威を振るう新型コロナウイルスなどのリスクに対する企業の備えとして、近年重要性が高まっているのが、緊急時の行動計画を定めたBCP(事業継続計画)だ。地方経済を調査研究する「あおもり創生パートナーズ」(青森市、ACP)によると、青森県内企業で策定の意向があるのは約6割に上るが、実際に策定しているのは約2割にとどまり、浸透は途上段階。ACPの担当者は「関心は高まっているが、時間や労力がかかるため、中小企業では策定に至らないのが現状だ」との見方を示す。[br][br] BCPは、緊急事態に遭遇した企業が、損害を抑え、事業継続や早期復旧をするための方法や手段をまとめた行動計画。東日本大震災でサプライチェーン(物品の調達・供給網)が寸断するなど、災害リスクが顕在化したことを契機に注目が集まった。[br][br] 昨年12月中旬~今年1月上旬に、県内企業317社にアンケートし、211社(回答率66・6%)が回答した。[br][br] BCPの策定状況は、策定済み(策定中含む)が23・2%、検討中は36・0%と、策定意向があるのは59・2%を占めた。[br][br] 策定意向があるとした企業に想定リスク(複数回答)を尋ねると、自然災害が最多の82・4%。感染症(新型コロナなど)は68・0%、火災・爆発事故は46・4%と続いた。[br][br] 策定しない理由(複数回答)は、「策定のノウハウ・スキルがない」が41・9%と最も高く、次いで「人材がいない」が32・6%。一方、「BCPが何か分からない」は20・9%、「必要性を感じない」が17・4%と、制度自体の認知度向上も課題となっている。[br][br] 調査を担当した地域デザイン部の福士暁シニアマネージャーは「近年は取引の条件としてBCPの策定を求める企業もある」と指摘し、「危機対応だけでなく、企業価値の向上や競争力強化にも役立つ」と策定のメリットを語る。 ただ、策定に向けては自社事業の精査や人材配置などが必要で、余力のない中小企業での導入は難しいとし、国が災害対策として普及を進める、BCPより申請が簡単な「事業継続力強化計画認定制度」の活用を提案。[br][br]「自社にとってのリスク認識や初動対応など基本的な部分を考え、社内で共有することが、企業の持続可能性を高めることにつながる」と述べた。