時評(4月18日)

原発の使用済み核燃料をプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料として再利用した後の燃料について、経済産業省は2030年代後半をめどに再処理技術の確立を目指す。位置付けが曖昧だった使用済みMOX燃料の「その後」を初めて明示した格好で、今夏.....
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 原発の使用済み核燃料をプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料として再利用した後の燃料について、経済産業省は2030年代後半をめどに再処理技術の確立を目指す。位置付けが曖昧だった使用済みMOX燃料の「その後」を初めて明示した格好で、今夏にも改定される次期エネルギー基本計画にこの方針を反映したい考えだ。[br][br] MOX燃料を使ったプルサーマル発電は余剰プルトニウム消費に向けた唯一の手段。電気事業連合会は「30年度までに少なくとも12基で実施」との新計画を掲げ、導入が進むほど後処理の課題は顕在化する。既に導入した原発では暫定的に保管せざるを得ない中、方向性を打ち出した点では評価もできよう。[br][br] ただし、核燃料サイクルが複数の要素をつなぐ「輪」によって成り立つ以上、全体像が不透明なままでは、政策上の合理性を欠く。[br][br] 特に動向を見通せないのは、日本原燃の再処理工場(六ケ所村)に続いて建設されるはずの「第2再処理工場」だ。使用済みMOX燃料は当初ここに搬出するとされたが、基本計画からは「引き続き取り組みを進める」との文言が前々回の改定で消え、整備の根拠そのものが薄らぐ。燃料の行き先は依然として定まっていないのだ。[br][br] 第2工場に続いて輪をつなぐための専用のMOX燃料工場も必要だが、議論は全くの白紙。もとより再処理を重ねて高コストな燃料の需要はあるのか。[br][br]「政府としての研究はいいとして、企業として乗るかどうかは別物だ」。電力業界関係者からはこんな本音も聞かれる。[br][br] 原発事故から10年。原子力に対する世論の信頼回復は今なお途上にあるばかりか、柏崎刈羽原発(新潟県)での相次ぐ不祥事によって東電が事実上の運転禁止命令を受けるなど、逆行している感すらある。工場新設が極めて困難な状況にある中、六ケ所にその役割を背負わせる可能性はないか。そうであれば弥縫(びぼう)策と言うほかない。[br][br] 原発活用を巡り、基本計画の改定議論に当たる有識者の間では、運転期間の延長推進といった積極論が勢いを増す。経済性やエネルギー安全保障への貢献に加え、温室効果ガス削減に向けた「確立した脱炭素電源」との評価も追い風となっている。[br][br] ならば青森県で一時貯蔵する高レベル放射性廃棄物は、増加が見込まれる廃炉廃棄物は一体どうするのか。核のゴミ一つを取っても政策の全体像は見えてこない。短絡的な原発回帰に懸念を覚える。