安定的な皇位継承策を議論する政府の有識者会議では、男系男子に限定する皇位継承資格を女性や女系に広げるかどうかが論点の一つだ。過去には8人の女性天皇がおり、自民党内の一部にも「男系女子は認めるべきだ」との声がある。一方、男系によって永遠に同一の血統が続く「万世一系」が崩れるとして、女系への異論は特に根強い。[br][br] 「わが国は古来、男系女子に継承資格を認めてきた伝統がある」。8日の専門家ヒアリング。慶応大の笠原英彦教授はこう強調し、女性天皇への賛成論を唱えた。[br][br] 父方が天皇の血筋を引く男系の男子のみが皇位を継ぐ制度は、明治期の旧皇室典範で成文化。現典範に引き継がれた。女性と、母方に血筋がある女系は認めていない。[br][br] 神武天皇以来126代続くとされる歴代天皇は全て男系。しかし必ずしも男性のみでなく、江戸時代以前には10代8人の女性天皇がいた。[br][br] 宮中の権力争いなどが続く中、中継ぎの役割で即位したとする論が多い。ただ推古天皇は35年以上も在位。持統天皇は藤原京への遷都のほか、律令(りつりょう)国家形成の基盤を造った実績があり、中継ぎ説に異を唱える専門家もいる。全員が在位中は独身だった。[br][br] 政府関係者は、天皇陛下の長女愛子さまを念頭に「『男系女子を特例で認めるのはやむを得ない』と語る自民党の有力議員も複数いる」と明かす。女性天皇への反対は、過去8人存在した歴史の否定にもつながるため、伝統を重視する党の立場と矛盾するというジレンマも抱える。保守派で知られるジャーナリストの桜井よしこ氏も、この日のヒアリングで「極めて慎重であるべきだ」との表現にとどめ、反対とは言い切らなかった。[br][br] 他方、女系天皇への反発は「保守派内でより強固になっている」(官邸筋)のが実情だ。仮に愛子さまが民間男性と結婚し、生まれた子どもが将来即位すれば、性別に関係なく女系となる。その場合、父方である民間家系の天皇が誕生して「王朝交代となる」(皇学館大の新田均教授)として反対論が強い。ヒアリングでも、女系への賛成意見は出なかった。[br][br] 男女平等やジェンダー論から皇位継承をどう捉えるかも、重要な観点になりつつある。従来は、世襲の在り方や血のつながりの問題で「女性差別とは一線を画す」との見解が強かった。ただ上皇さまの天皇退位を巡る政府有識者会議で座長代理を務めた御厨貴(みくりや・たかし)東大名誉教授は共同通信の取材に「世界の潮流はそのような段階ではない」と指摘。男女同権の意識の高まりから「天皇陛下だけは別だという議論を立てられる時期は過ぎた。皇室は国民から無視されれば存在できない」と問題提起している。