新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」初適用を前にした4日の全国知事会オンライン会合では、各知事から変異株の急拡大に対する危機感を示す発言が相次いだ。感染再拡大の「第4波」を食い止められるかどうかの瀬戸際だが、後手に回る国の対応への不満も根強い。[br][br] ▽反省[br] 「変異株の影響は確実にある。緊張感を持って対応したい」。5日から重点措置適用となった3府県のうち大阪府の吉村洋文知事はこう述べ、警戒を呼び掛けた。[br][br] 同じく適用対象の宮城県の村井嘉浩知事は、3月上旬まで県内の感染状況は落ち着いていたと説明。「3月11日の東日本大震災(から10年)の前後で人が動くことは分かっていたが、特に対策を打たなかった。このような結果になり深く反省している」と語った。[br][br] 変異株の脅威に関する報告は、他地域からも続いた。岡山県の伊原木隆太知事は「(感染者に占める)変異株の割合が急上昇し、大変驚いている」と強調。岐阜県の古田肇知事は「市中にまん延しつつある。第4波に入ったのでは」と述べた。[br][br] 国は緊急事態宣言の解除を急ぎ、2月末に大阪など6府県、3月21日に全面解除に踏み切った。広島県の湯崎英彦知事は「感染状況が下がりきらない中で解除し、飲食業の営業時間短縮を緩和するなど(対策強化と)逆の方向に行った。しっかり反省する必要がある」と批判した。[br][br] ▽温度差[br] 会合では、変異株の感染拡大を肌身で感じる知事たちと国の温度差も浮き彫りになった。[br][br] 「明らかに従来型以上のスピードで感染が広まっていく。(国の)変異株の実態に関する感覚は甘すぎる」。こう憤ったのは愛媛県の中村時広知事。多くの自治体では変異株の検査体制が十分整備されておらず、「全数調査できる体制が肝要」(川勝平太静岡県知事)など国の対応遅れに対する不満が相次いだ。[br][br] 国は、入院患者に対し2度のPCR検査を受けて陰性だった場合に退院できるとの基準を示しているが、岐阜県の古田知事は「変異株の患者急増とともに、入院患者が滞留する現象が起きている」と指摘。医療の逼迫(ひっぱく)を防ぐため、早急な基準見直しを求める意見も多数出た。[br][br] 知事会の要請に基づき2月に創設されたまん延防止等重点措置は今回が初適用。だが感染長期化に伴う住民の「自粛疲れ」もあり、十分効果を発揮するかどうかは見通せない。[br][br] 知事会長の飯泉嘉門徳島県知事も「重点措置のみで感染拡大を抑えられるわけではない」と対策の限界を指摘。住民の理解を深める総合的な取り組みが必要だと訴えた。[br][br] 制度運用の面でも、神奈川県の黒岩祐治知事は「大阪府が希望してから適用まで時間がかかった」と述べ、知事の判断で迅速に適用できるよう運用の見直しを求めた。