バイデン米大統領は就任後初の記者会見で、厳しい質問に言葉を詰まらせながらも誠実に回答を続けた。「フェイクニュース」と言いがかりを付け、都合の悪い質問をかわしたトランプ前大統領との違いは鮮明だ。新型コロナウイルス対策の実績を強調したバイデン氏に対し、報道陣は移民問題や北朝鮮対応を追及。コロナ以外は後手に回っている現状も浮かんだ。[br][br] ▽尊重[br][br] 「他のどの国もまねできない」。25日、重要発表時に使われるホワイトハウスのイーストルーム。就任2カ月余りのバイデン氏は冒頭、ワクチン接種を加速させた実績を誇示した。「経済にも希望の兆しが見え始めている」。国難打破へ前向きな雰囲気を演出した。[br][br] トランプ氏は就任約1カ月後の2017年2月、初めて一人で行った会見で、大統領選の結果を巡り事実と異なる主張を展開。気に入らない質問を遮って記者に「座れ」と命じ、険悪な空気を生んだ。前任オバマ氏側への異例の攻撃も行った。[br][br] 一方、バイデン氏は「私は問題を解決するために選ばれた。分断を生み出すためではない」と表明。「無礼でひどいやつだ」と記者をこき下ろしたトランプ氏の会見とは空気が全く違った。[br][br] トランプ氏を「人権問題に背を向けた」と批判しつつ「いなくなって寂しいよ」と軽口で、けむに巻く。「現場取材した事実に感心する」「すぐに取材できるようにする」。報道陣を尊重する発言も相次いだ。コロナ対応で入場者を限定したこともあり、トランプ氏のように“集中砲火”を浴びる場面はなかった。[br][br] ▽守勢[br][br] ただ質疑応答では守勢が目立った。気候変動対策や銃規制などの重要課題で具体策は示されず、野党共和党の協力も得られていない。「それで政権の成功と言えるのか」。厳しい問いが続く。[br][br] 質問が集中したのは移民問題だ。トランプ政権の不寛容な移民政策からの転換後、メキシコから歩いて越境してくる移民が急増しているからだ。[br][br] 「私がナイスガイだからではない」。冗談を交えながら、増加は過去何年も続く問題だと強調。人道策を掲げたことが急増を招いたとの指摘にも「謝るつもりはない」と胸を張った。だが環境の劣悪さが懸念される子ども移民収容施設の公開時期を問われると「正直、分からない」と言葉を詰まらせた。[br][br] ▽回復[br][br] 外交では対立する中国や北朝鮮、米軍撤退を目指すアフガニスタンが話題に。中国に世界一の座は明け渡さないと強調したが、策は見えない。アフガン駐留米軍は4月末の期限までの撤退は難しいとしたが、新たな期限は明示できなかった。[br][br] バイデン氏は23日、北朝鮮による巡航ミサイル発射を「よくあることだ」と一笑に付していたが、北朝鮮は直後に弾道ミサイルを発射。挑発には「相応の措置を取る」と会見で語ったが、有効策を見いだすのは困難との見方が多勢だ。北朝鮮が外交の最優先課題かと問われると、真顔で「イエス」とだけ答え、すぐ次の質問に移った。[br][br] それでも、メディアの受け止めは総じて好意的だった。英紙ガーディアンは「過去4年間、病気に苦しんだ米政治は回復に向かっているようだ」と分析。米政治サイトのポリティコも「自ら失言癖を認めているが、目立ったミスはなかった」と評価した。(ワシントン共同)