【南海トラフ災害ゴミ】進まぬ処理計画、広域協定 

 東日本大震災の後、岩手県宮古市のがれき処理現場を視察する全国の自治体担当者ら=2011年11月
 東日本大震災の後、岩手県宮古市のがれき処理現場を視察する全国の自治体担当者ら=2011年11月
2011年の東日本大震災では災害ごみが大量に発生し、処理に苦慮する自治体が相次いだ。南海トラフ巨大地震での推定発生量はその約10倍。環境省は事前準備が重要だとし、処理計画の策定や広域処理協定の締結を自治体に促してきたが、いずれも大きく進んで.....
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 2011年の東日本大震災では災害ごみが大量に発生し、処理に苦慮する自治体が相次いだ。南海トラフ巨大地震での推定発生量はその約10倍。環境省は事前準備が重要だとし、処理計画の策定や広域処理協定の締結を自治体に促してきたが、いずれも大きく進んでいない。環境省は焦りを募らせるが、自治体は「ノウハウも人材も不足している。人的、財政的な支援を」と訴える。[br][br] ▽100年分[br][br] 東日本大震災で津波被害に遭った宮城県では、石巻市で456万トン、東松島市で110万トンの災害ごみが発生した。それぞれ通常のごみの83年分と100年分。東松島市の担当者は「被害状況の把握や避難所運営など業務量が膨らむ中、ごみ処理に携わる職員確保が課題だった」と振り返る。[br][br] 仮設焼却施設の建設場所を巡り住民から反発が出たり、分別に時間がかかったりして処理が長期化した地域もあった。[br][br] 県内で処理しきれなかった約25万トンは、青森や茨城など6都県の自治体が引き受けた。処理が完了したのは震災発生から約3年後の14年3月末。広域処理を調整した宮城県の担当者は「広範囲が被災した状況で、引き取ってくれる自治体があるかどうか。事前に確認しておくことが大切だ」と話した。[br][br] ▽人材不足[br][br] 東日本大震災を教訓に環境省は全国の都道府県と市町村に計画策定などを促してきたが、市町村で策定済みなのは20年3月時点で51%にとどまる。「21年度中には策定したいが、人手も知見も足りない」(和歌山県新宮市)と苦境を訴える声が上がる。[br][br] 環境省は19年度、南海トラフ巨大地震発生時の四国での処理シミュレーションをまとめた。発生後3年で片付けるには、1日当たり2万4千トンを被災地以外で処理する必要がある。円滑な処理には計画や協定が不可欠とみる。[br][br] 策定率向上を急ぎたい環境省は、自治体職員にノウハウを伝える研修会も開いているが、全国市長会は「研修などソフト面だけではなく、策定経費に対する財政支援も含め幅広い支援が必要だ」と強調する。[br][br] ▽不断の見直し[br][br] 南海トラフ巨大地震で大きな被害が想定される高知県は全自治体が計画を策定済み。高知市は15年に作った計画を今月中に改める。実効性を高めるのが狙いで、担当者は「近年災害が続発しているので、不断の見直しを続けていきたい」と話す。[br][br] 住民に協力を求める動きも。岡山県倉敷市は20年、災害ごみの分別方法を告知する住民向けハンドブックをまとめた。土砂や畳、家電など品目ごとに仮置き場に持ち込むよう呼び掛けている。[br][br] 18年の豪雨で広範囲が水没、住民があちこちに積み上げたごみの収集に手間がかかったためだ。市担当者は「分別すれば処理速度が上がる。普段からの啓発活動が必要と気付いた」と語る。[br][br] 千葉大の丸山喜久教授(地震防災学)は「特に小規模自治体で計画策定や民間処理業者との連携が進んでいない印象だ。このまま巨大地震が起きると処理しきれない廃棄物が生じ、復旧復興の第一歩が遅れてしまう」と危惧。国主導による対策が急務だとし「少しでも発生を抑えるには、建物耐震化のほか、空き家の計画的な解体などを進めるべきだ」と提案した。 東日本大震災の後、岩手県宮古市のがれき処理現場を視察する全国の自治体担当者ら=2011年11月