三沢市の2021年度一般会計当初予算が成立した。総額は前年度当初比9・9%増の244億2800万円。ごみ焼却施設や火葬場の整備など、公共施設の大規模改修により普通建設事業費が増え、当初予算では過去最大の規模となった。[br][br] 新型コロナウイルスの感染拡大の影響に伴う市税など一般財源の減収、さらには冬の除排雪対策で想定を上回る支出も余儀なくされた。[br][br] 厳しい財政状況下で編成した予算には、市民生活に欠かせない施設整備だけでなく、小中学校への冷房完備に向けた基本計画策定や実施設計、全新生児の聴覚検査費用の全額助成などを進める事業費を計上した。特に24年度末までの完了を目指すエアコン整備は、昨夏の猛暑を考えれば、子どもたちの教育環境改善のためにも必須と言える。[br][br] やるべきことはやらねばならない一方で、市の将来を考えた時に懸念されるのは、借金である市債の増加と、自主財源が低水準という2点だ。[br][br] 市債は同97・1%増の22億9090万円。市債残高は21年度末で161億7942万円を見込む。18年度に本格着手し5年間で約85億円をかけるごみ焼却施設の建設などで、数字の膨らみがあらかじめ想定されていたとしても、将来世代に大きな負担となっている現状には厳しい目を向けなければならない。[br][br] また、予算全体に占める自主財源の割合は同2・5ポイント減の26・5%。国からの補助金の国庫支出金、地方交付税、国有提供施設等所在市町村助成交付金(基地交付金)の3つで依存財源の7割を占め、依存度の高さが際立っている。[br][br] 多額の補助金のおかげで市民のために進められる事業があるのは分かる。だが、迎えるのはコロナ禍“2年目”。市内では経済が打撃を受け、飲食業をはじめ体力の限界や経営不安から悲鳴が上がっている。この1年、経済の縮小が20年度以上に見込まれるのは想像に難くない。[br][br] 単年度を乗り切るだけでなく将来を見据えた体質強化のためにも、自主財源の水準を押し上げる施策が必要ではないか。市民サービスを低下させず、生活を支えるという目前の課題に取り組みつつ、財政の自立度向上を目指して産業振興、市内への移住・定住の促進にさらに努めるべきだ。[br][br] 豊かな自然、人材、空港や駅、産業、農林水産物、温泉。資源は十分ある。21年度は正念場だ。苦境をいろんな挑戦ができる好機と捉え、「三沢力」強化への一歩を踏み出してほしい。