天鐘(3月22日)

「春眠暁を覚えず」とは中国唐代の詩人孟浩然(もうこうぜん)『春暁』の一節。五言絶句の高尚な詩だが、ちょうど今頃、朝寝坊の言い訳にも使われる。布団の温みから離れがたい春の朝である▼紀元前8000年頃に出現したコロナウイルスはコウモリや鳥類にす.....
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 「春眠暁を覚えず」とは中国唐代の詩人孟浩然(もうこうぜん)『春暁』の一節。五言絶句の高尚な詩だが、ちょうど今頃、朝寝坊の言い訳にも使われる。布団の温みから離れがたい春の朝である▼紀元前8000年頃に出現したコロナウイルスはコウモリや鳥類にすみ着いてきたが、60年程前、ひょんなことから人間の体に入り込むことに成功。布団のように暖かさが一定で栄養豊富な人体の虜(とりこ)になった▼“人肌”を知れば体温が変わり、栄養不足の小動物に戻る気にはならないだろう。味を占めた人体を借りて「遺伝子を残そうと貪欲に利己的に振る舞う」(リチャード・ドーキンス著『利己的な遺伝子』)ことに▼20万年前に誕生して最強となった人間の天敵は40億年前から君臨する微生物。近年の戦績は「9勝1敗」で微生物の圧勝だ。寄生する彼らを薬やワクチンで撃退を試みるが、彼らも耐性を獲得して猛反撃する▼わが身がコロナ達の温床にされてはかなわない。コロナ有利の局面を一変させる「切り札」のワクチン接種に明日を託すが、敵も既に感染力や毒性、耐性を変幻自在に変異させながら“軍拡競争”にも備えている▼なお人間が劣勢なのに緊急事態解除に五輪と箍(たが)が緩み放しだ。進化は想像を絶する「深い時間」の中で起きている。1年で「コロナ疲れ」と騒ぎ立てれば“変異株”の十字砲火を浴びかねない。疲れてはいるがまだまだ緒戦だ。