ワクチン情報へのサイバー攻撃激化 国家支援のハッカー暗躍か

 ワクチン情報などを狙った主なサイバー攻撃対象
 ワクチン情報などを狙った主なサイバー攻撃対象
新型コロナウイルスのワクチン情報を狙ったサイバー攻撃が世界各地で激化している。欧州医薬品庁(EMA)など海外の政府機関や製薬会社だけでなく、日本企業も攻撃を受けた。世界各国が「ワクチン外交」を繰り広げる中、開発情報は重要機密。専門家はロシア.....
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 新型コロナウイルスのワクチン情報を狙ったサイバー攻撃が世界各地で激化している。欧州医薬品庁(EMA)など海外の政府機関や製薬会社だけでなく、日本企業も攻撃を受けた。世界各国が「ワクチン外交」を繰り広げる中、開発情報は重要機密。専門家はロシアや中国など国家が支援するハッカーが暗躍していると警告する。[br][br] ▽ファイル約50個[br][br] ワクチンの成分、製薬会社とのメール内容、臨床試験データ…。ロシア系ハッカーが利用するという「闇サイト」を見た情報セキュリティー関係者は驚いた。公開されていたのはEMAから流出したとみられる約50個のファイル。内容から本物にほぼ間違いない。ハッカーはこの情報を基に「これは偽ワクチンだ」と虚偽情報を流していた。[br][br] EMAは昨年12月、サイバー攻撃で医薬品とワクチンに関する文書がインターネット上に流出したことを明らかにした。米ファイザーとワクチンを共同開発するドイツのバイオ企業ビオンテックや英アストラゼネカ、コロナに関する英オックスフォード大の研究所も攻撃されたとみられる。[br][br] 日本ではワクチン開発を進める塩野義製薬の台湾法人や、コロナ感染症対策の重要拠点である国立国際医療研究センターも攻撃された。[br][br] 米マイクロソフトは、米国、カナダ、フランスなどの七つの大手製薬会社と研究者らが標的になったと確認。パスワードを大量に入力して本人に成り済ましてログインを試みたり、偽メールを送り付けて情報を盗もうとしたりしていた。[br][br] ▽中ロが関与か[br][br] 英、米、カナダは昨年7月、ワクチン開発に関わる政府機関にロシアの情報機関と関係がある組織が攻撃を仕掛けていると発表した。報告書によると、攻撃者は「APT29」、別名「コージーベアー」と呼ばれる。[br][br] 長年この組織の動向を監視している米情報セキュリティー会社ファイア・アイによると、ロシア政府との関与が疑われ「最も進化し、高度な訓練を受け、高い能力を備えているグループの一つ」。過去にはホワイトハウスや米政府機関を攻撃し、内部のメールを監視していたとみられる。[br][br] 米司法省は他にも、中国政府から依頼されて企業や政府機関へハッキングを繰り返し、コロナに関する研究成果などを狙っていた中国人2人を起訴した。[br][br] 情報セキュリティー会社「サイント」の岩井博樹社長は、重要機密を盗み出すため国家が関与した組織がサイバー攻撃を仕掛けることは以前から行われている情報活動の一環だと指摘。「今狙われているのはワクチン情報。各国が自国開発やワクチン販売による外貨獲得のため最新情報を入手しようと躍起になっている」と話している。 ワクチン情報などを狙った主なサイバー攻撃対象