【東通原発の共同事業化】東電、描けぬ完成への青写真

建設工事の再開時期が見通せない東京電力東通原発=2017年10月、東通村
建設工事の再開時期が見通せない東京電力東通原発=2017年10月、東通村
東京電力ホールディングスは19日、東通原発(東通村)の建設や運営を担う事業主体の基本的枠組みを、年度内に提示するという村との約束を事実上ほごにした。単独での事業化が困難な中、メーカーや他電力との共同事業化も難航。その上、柏崎刈羽原発(新潟県.....
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 東京電力ホールディングスは19日、東通原発(東通村)の建設や運営を担う事業主体の基本的枠組みを、年度内に提示するという村との約束を事実上ほごにした。単独での事業化が困難な中、メーカーや他電力との共同事業化も難航。その上、柏崎刈羽原発(新潟県)で核物質防護の不備問題が判明し、原子力事業者としての意識の低さをまたも露呈した。建設工事が中断している東通原発完成までの青写真は、下書きすら描かれていないのが実情だ。[br][br] 「あり得ないよな」。問題が相次ぐ東電を、青森県関係者はこう切り捨てた。[br][br] 再稼働を急ぐ柏崎刈羽原発では、所員が昨年9月に他人のIDカードを使って不正に中央制御室へ入ったことが発覚。安全対策工事の未了も複数で見つかり、原発事業者としての適格性に疑義が生じ始めていた。[br][br] そんな折、設備機能が一部喪失したのに実効性のある代替措置を講じず、昨年3月以降、不正な侵入を検知できない可能性があったことが発覚。原子力規制委員会の更田豊志委員長は問題に対する検査に「1年以上はかかる」とし、対応の長期化を示唆した。[br][br] 度重なる不手際と、東通原発の事業主体提示が困難になっている状況との関連を、原田知行青森事務所副所長は19日の会見で「重く受け止めているが、柏崎が影響していると断言はできない」と否定。ただ、県関係者は「問題が解決しないのに東通の枠組みは示せないだろう」と推測する。[br][br] そもそも問題が頻発していなかったとして、東電が共同事業化の枠組みを年度内に示せたか疑問が残る。[br][br] 原田氏は同日、共同事業化に対する質問に「地質調査や共同事業化などさまざまな状況を踏まえ、どのような形で示せるのか検討している」と、事業主体の方向性に含みを持たせた。[br][br] 東電は19年、中部電力と原発メーカー2社と共に、原発の共同事業化を検討することで合意。その際、東通に関しても議論を進め、20年度ごろに体制を示すとしていた。[br][br] だが、ある電力関係者は「メーカーは何年で採算が取れるか分からない事業に、二の足を踏んでいるのだろう」と分析。他電力が参画する可能性についても「それぞれ再稼働を急ぐ原発がある中、枠組みに入る必要性がない」と吐露する。[br][br] 越善靖夫村長は完成時期が見通せない状況に「40年にわたって重ねてきた信頼関係が崩壊しかねない」と苦言を呈した。建設工事の再開時期が見通せない東京電力東通原発=2017年10月、東通村