日米が外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開き、中国を見据えた「同盟の絆」(茂木敏充外相)を確認した。国際協調を掲げるバイデン米政権の下でも、同盟の「対中シフト」は維持された形だ。ただ日本は日中関係に影響を及ぼす圧力政策には慎重で、人権問題で中国を非難する米国との間で開きがある。米側が同盟強化を理由に新たな負担増を迫るとの観測もある。課題は多い。[br][br] ▽高評価[br][br] 16日午後、東京都内の飯倉公館。「初の訪問先を日本にしたのは偶然でない。米日同盟は地域だけでなく、世界にとっての平和と安全保障の礎だ」。米国のブリンケン国務長官は2プラス2に先立つ日米外相会談で来日の意義をこう説明し、米国から対日重視姿勢を引き出したかった日本側関係者を喜ばせた。[br][br] 茂木氏は会談後、最も時間を割いた議題について「中国の問題だ」と言明。岸信夫防衛相とオースティン国防長官も加わった2プラス2では、2月に海警法を施行した中国に対する「深刻な懸念」を共有した。日本政府は中国への反発を強める国内世論を意識し、従来よりも中国に厳しい姿勢で臨んだ形。海警法は、沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返す中国海警局の船に武器使用を認める中国の国内法だ。[br][br] 新政権の発足で日米同盟が弱まる恐れはないのか―。バイデン大統領との連携に関し、こうして不安視する声も一時は漏れた。日米同盟は安倍晋三前首相とトランプ前大統領との個人的信頼関係の下で強化されてきたからだ。それだけに、新型コロナウイルス禍の下で来日した2長官と結束を確認できたことを、日本政府は「高く評価」(官邸筋)する。[br][br] ▽温度差[br][br] だが中国の人権問題への対応では、足並みがそろわない。新疆ウイグル自治区の少数民族ウイグル族に対する人権侵害を巡り、日本政府は「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と明言せず、米国と一線を画している。米国に追従してジェノサイド認定すれば中国の猛反発を招き、影響が日中経済関係に及びかねないとの懸念が背後にある。[br][br] 香港問題では、米国がブリンケン国務長官名の声明で中国を非難したのに対し、日本は格下の外務報道官談話を出す対応にとどめた。日米は2プラス2で、ウイグルと香港の両問題への「深刻な懸念」を表明し、共同歩調を演出したが、溝は埋まっていない。日本外務省筋は「中国は隣国。米国のように振る舞うのは難しい」と指摘する。[br][br] 韓国を巡る立場の違いも鮮明だ。日本政府は日韓対立の原因に関し、歴史問題を蒸し返した韓国側にあるとの認識を米側に伝えている。ただ日米韓の北朝鮮連携を重視する観点から「日韓ほど重要な関係はない」(国務省)と指摘するバイデン政権を説得できたかは見通せない。[br][br] ▽請求書[br][br] 2長官が最初の訪問地に日本を選んだことについては「見返りに対中抑止への新たな貢献策を日本に求めるのではないか」(政府筋)との声が上がる。インド太平洋地域で軍事的優位に立とうとする中国の動きに、米国が同盟国と共に対抗する構えを見せるためだ。[br][br] 取り沙汰されるのは、在日米軍駐留経費(思いやり予算)の負担増だ。米軍が尖閣情勢を念頭に、騒音など住民負担につながる日本周辺での訓練をさらに増やすとみる向きもある。防衛省幹部は「『2プラス2は成功した』では終わらない。後から回ってくる請求書が問題だ」と身構える。(東京、ワシントン共同)