東京電力福島第1原発事故で国の避難指示が出た福島県大熊町や浪江町など11市町村のうち、避難解除された区域に住民票を置く人で、実際に居住するのは31・6%にとどまることが9日、各自治体への取材で分かった。居住率の伸びは年々鈍化傾向にある。[br][br] 避難解除区域の高齢化率(65歳以上の割合)は全国の1・5倍。住民調査では「町に戻らない」との回答が高止まりしている。県は新産業創出で若者の帰還促進と移住促進を目指す。政府も9日の閣議で改定した復興の基本方針で、交流人口の拡大に取り組むとした。11日で東日本大震災から10年となる。[br][br] 居住率と高齢化率は1月31日か2月1日時点で各市町村が集計したデータを基に算出した。解除地域に住民票があるのは4万5491人で、居住しているのは1万4374人だった。[br][br] 解除地域の範囲が異なるが、1年前の同様の取材では10市町村の居住率は28・5%、2年前は9市町村で23・1%、3年前は同14・8%で、上昇のペースが落ちている。[br][br] 居住者数には廃炉作業が続く第1原発や復興の関連で転入した作業員らも含まれ、避難先から戻った住民の数はさらに少ない。避難元の自治体から住民登録を外す人も増えている。[br][br] 年齢構成の回答が得られた9市町村の高齢化率は43・1%だった。全国の28・8%(2020年9月)に比べ高さが顕著だ。福島県は、県沿岸部に新産業を創出する「福島イノベーション・コースト構想」で地域を活性化させたい考えだが、人口増につながるかは不透明だ。[br][br] 復興庁が昨年8~10月に実施した双葉、大熊、浪江、富岡の4町の住民意向調査で、「戻らない」と答えた住民の割合が約5~6割と昨年とほぼ同水準。「戻りたい」との回答は1割にとどまる。「既に避難先に生活基盤ができている」との理由が多かった。[br][br] 福島県の内堀雅雄知事は8日、居住率の低迷について「住民が『古里に戻っても良い』と思える環境づくりをしたい」と述べた。