【震災10年】原子力災害時の段階的避難 住民の冷静な行動を不安視

30キロ圏外への避難を想定して訓練に臨む東通村民ら=2020年11月、同村
30キロ圏外への避難を想定して訓練に臨む東通村民ら=2020年11月、同村
未曽有の被害をもたらした東京電力福島第1原発事故から間もなく10年。原子力災害時の対策重点区域は事故後に見直され、原発は半径30キロ、使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)は半径5キロに拡大した。これに伴い、避難住民は原子力施設との距離や放射.....
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 未曽有の被害をもたらした東京電力福島第1原発事故から間もなく10年。原子力災害時の対策重点区域は事故後に見直され、原発は半径30キロ、使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)は半径5キロに拡大した。これに伴い、避難住民は原子力施設との距離や放射性物質の放出状況に合わせ、段階的に避難することとなる。ただ、対象住民や自治体からは「計画に沿って避難できるかは分からない」と危ぶむ声も上がる。[br][br] 原発の対策重点区域は、5キロ圏の予防防護措置区域(PAZ)と、5~30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)に区分される。[br][br] 東北電力東通原発(東通村)で想定される最大避難者数は4市町村の約6万6千人。敷地外への放射性物質放出の可能性が高い全面緊急事態に発展した場合、5キロ圏の住民は避難、5~30キロ圏の住民はまず屋内退避し状況に応じて段階的に避難―と対応が分かれる。[br][br] こうした対応を取るのは、避難経路の渋滞・混雑を避けるためだ。福島の事故が発生した2011年3月12日、第1原発から10キロ前後の浪江町の住民約8千人は一斉に西側へ避難。国道は渋滞し、普段なら30分で到着する町の支所まで約3時間を要した。[br][br] 青森県が16年に示した東通原発の避難の基本方針でも、屋内退避が行われず一斉に自主避難した場合、避難時間が増大し、住民が不要な被ばくを受ける可能性があるとしている。[br][br] 発災時、5~30キロ圏の住民は屋内退避を求められるが、指示通りに動いてくれるかどうかは読み切れない。東通村原子力対策課の川上博之課長は「緊迫した状況で指示に従ってくれるか懸念はある」としつつ、「住民に協力をお願いしていくしかない」とする。[br][br] 青森県の安田浩原子力安全対策課長も「段階的に逃げることが効率的だいうことを繰り返し周知していく必要がある」と強調する。[br][br] ただ、東通原発から約20キロの地点に住む主婦石田恵美子さん(50)=同村野牛=は「実際には冷静な判断ができるか分からない。複合災害が起きたら、屋内退避が必要でもすぐに逃げるかもしれない」と漏らす。[br][br] 一方、使用済み核再処理工場は5キロ圏がUPZとされ、PAZは設定されていない。UPZ圏内の六ケ所村民約3600人は屋内退避が基本となる。[br][br] 災害発生時に児童生徒が学校にいる際は、保護者に引き渡すなどの対応を取る。村教委学務課は「避難計画は学校ごとに策定しているが、事故が突然起きた場合にその通り動けるかは正直分からない。不安を取り除くために地域と連動した訓練が必要だ」と話した。30キロ圏外への避難を想定して訓練に臨む東通村民ら=2020年11月、同村