ベルリン国際映画祭で「偶然と想像」が審査員大賞に輝いた浜口竜介監督は、世界的に定評のある是枝裕和、黒沢清、河瀬直美各監督らに続く、次代を担う日本人監督として国内外で注目を集めている。[br][br] 最初に光が当たったのは主人公の女性4人の日常を丁寧に描いた「ハッピーアワー」(2015年)だった。出演者の大半が演技未経験者で、5時間17分という長尺の作品にもかかわらず、ロカルノ国際映画祭の最優秀女優賞などを受賞した。[br][br] 18年には世界最高峰のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に「寝ても覚めても」が選出。主演の東出昌大ひがしでまさひろさんらはユニークな演出方法を「浜口メソッド」と呼び、大きな信頼を寄せていた。[br][br] 出演者が事前に集まって台本を読む際は徹底して棒読み。本番で初めて感情を込めることで、共演者の自然な反応を引き出せるのではないかと浜口監督は考えた。どうすれば「演技が演技でないように見えるか」を模索した一つの方法論だった。[br][br] 実験的精神は今回の受賞作にも宿る。「短編映画という形式にはずっと大きな可能性を感じていた」という浜口監督の初の短編集。現実的には日本の映画館で短編を単体で上映するのは難しいため、統一したテーマで3話を製作し、「長編映画サイズ」に仕上げた。[br][br] また、昨年はコロナ禍の小規模映画館を支援しようと、クラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」を深田晃司監督らと立ち上げ、ベネチア国際映画祭で黒沢監督が監督賞を受賞した「スパイの妻」では共同で脚本を執筆するなど、幅広く活躍している。