みずほ銀行が「3度目」の大規模なシステム障害を起こした。巨額を投じて基幹システムを統合させた慢心からなのか、過去のトラブルの教訓が生かされることはなかった。運用の不手際で繰り返された失態に、メガバンクの信頼はまたもや失墜した。[br][br] ▽甘い想定[br][br] 「痛恨だ。(システムは)盤石なつもりだったが…」。みずほ銀の親会社であるみずほフィナンシャルグループ首脳は1日朝、記者らを前にうなだれるしかなかった。[br][br] 障害のきっかけは2月28日に行った定期預金のデータ更新だ。残高や利息を確定する月末の定例作業約25万件に、1年間取引がない定期預金の情報を分けて管理する移行作業約45万件が加わったことで処理能力の上限を超えた。みずほは根本的な原因を「想定の甘さ」(藤原弘治頭取)と認めざるを得なかった。[br][br] 定期預金の不具合を検知したことで、現金自動預払機(ATM)とインターネットバンクで、定期預金に関する取引が遮断された。さらに、システム全体への負荷を抑えるため、ATM全体の取引を大きく絞り込んだ。[br][br] こうして起きたATM障害の広がりを認識するのに時間も要した。保有するATMの大半に当たる4318台が一時停止し、機械に吸い込まれたまま戻らなくなったキャッシュカードや通帳の数は5千を超えた。[br][br] 店頭で長時間待ちぼうけを食わされる顧客の姿が報じられ、金融庁幹部は「非常にお粗末。キャッシュカードがATMから出てこなくなるなんてあり得ない」とあきれ果てた。[br][br] ▽呪縛[br][br] みずほは2019年7月、約1年間に及んだ新勘定系システムへの移行を完了。投資額は約4500億円に上り、グループの経営を揺るがしてきた「システムの呪縛」(中堅幹部)から逃れたはずだった。[br][br] 「装置産業」とも言われる銀行界のシステムでは小さな不具合は比較的頻繁に起きている。いかに決済や取引に支障を及ぼさないか、あるいは被害を最小化させるか各行の管理能力が問われる。みずほの障害多発に関し、他の大手銀の関係者は「システムや技術に違いがあるとは思えない。危機対応力の差だ」と指摘する。[br][br] 東洋大の野崎浩成教授(金融論)は「データやアプリの更新はどこの銀行も定期的に行っている。そのたびにATMやネットバンクが止まっていたら話にならない」と手厳しい。[br][br] 藤原氏は「経営責任はある」と認めたものの、4月には代表権を返上し、会長に退くことが決定済みだ。加藤勝彦次期頭取は、顧客の信頼回復に取り組む逆境からの船出となる。