時評(2月20日)

東京五輪・パラリンピック組織委員会の新会長に橋本聖子前五輪相が就任した。女性蔑視発言で引責辞任した森喜朗前会長の後任だ。新型コロナウイルス感染拡大で開催が危ぶまれ、森発言への批判と後継人事をめぐる不透明さで、五輪全体への支持は急激に低下して.....
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 東京五輪・パラリンピック組織委員会の新会長に橋本聖子前五輪相が就任した。女性蔑視発言で引責辞任した森喜朗前会長の後任だ。新型コロナウイルス感染拡大で開催が危ぶまれ、森発言への批判と後継人事をめぐる不透明さで、五輪全体への支持は急激に低下していた。組織委の新体制で、揺らいだ信頼を回復できるかが焦点となる。[br][br] 森前会長が、独断でサッカー出身の川淵三郎氏を後継指名したことが、組織委の混迷をさらに深めた。密室人事と指摘されたこともあり、新会長選びは候補者検討委員会を設けて透明性を重視した、という。だが、橋本氏を選んだ過程に納得できる人はそれほど多くはないだろう。[br][br] 検討委は「スポーツへの造詣」「国際感覚」など新会長の資質として5点を示して、橋本氏を選んだと説明している。確かに五輪夏冬7大会に出場した同氏の実績は申し分なく、日本スケート連盟会長などを歴任し組織運営経験もある。しかし、森発言の反作用として「女性」が選任理由であったり、83歳の森氏に対して56歳の「若さ」を買われたりしたのだとしたら疑問が残る。[br][br] 何より橋本氏が現職の政治家で、現政権の閣僚からの横滑りという点が最大の懸念だ。五輪は国の財政支援も得た国家的イベントではあるが、政治的には中立であることが大原則だ。全体主義国家の五輪ではない。近年の民主国家の五輪で、これほど生々しく政治が前面に出てきた例はない。[br][br] 橋本氏は政府から送り込まれた「助っ人会長」であってはいけない。冬はスケート、夏は自転車の二刀流で活躍した同氏は「五輪の申し子」と呼ばれた。元アスリートならではの選手目線でも「安心・安全」な大会準備を再点検し、迎え入れる開催国市民の理解を得たい。[br][br] 五輪開幕まで残り約5カ月。新型コロナウイルスの感染状況が予断を許さない中、組織委は国際オリンピック委員会(IOC)などと緊密に連携して、何度か重大な判断を迫られよう。開催に向かうなら、観客制限をどうするのか。3月末ごろまでに、その決断も必要だ。[br][br] 組織委批判と五輪熱低下により、大会を裏方で支えるボランティアの辞退者が続出し、聖火ランナーをやめる人まで現れた。「女性会長」「若さ」などのイメージ戦略だけでは東京大会への支持は回復できまい。橋本氏は新しい「五輪の顔」として開催の理念と意義を改めて発信し、五輪運動への支持を取り戻さなければならない。