天鐘(2月20日)

「やればできる」とは躓(つまず)きながらも挑み続ける“しなやかな思考”のことで、やがて成功への鍵になる。接種が始まった新型コロナワクチンの開発は、そのしなやかな思考が見事に共鳴した奇跡の“芸術”でもあった▼開発した米ファイザーにとり独ビオン.....
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 「やればできる」とは躓(つまず)きながらも挑み続ける“しなやかな思考”のことで、やがて成功への鍵になる。接種が始まった新型コロナワクチンの開発は、そのしなやかな思考が見事に共鳴した奇跡の“芸術”でもあった▼開発した米ファイザーにとり独ビオンテックとの提携が全てだった。ウグル・サヒン博士とオズレム・トゥレシ博士夫妻が始めたバイオテクノロジー企業で、30年に及ぶ遺伝子ワクチン研究が一気に結実した▼科学者の半分は女性で国籍は60カ国。副社長も女性で生物化学の権威カタリン・カリコ氏。ペンシルベニア大時代に手掛けた遺伝情報をタンパク質に翻訳する橋渡し役「mRNA」は評価されず、降格の憂き目に▼握り潰(つぶ)された論文に目を止めたのがサヒン氏と承認薬一つない英モデルナ。一地方企業と開発段階で名もない新興の両社だったが、切り札に着目したしなやかな思考と幾つもの幸運が重なって奇跡が誕生した▼昨年1月11日、コロナの遺伝子配列が発表されるや、サヒン氏は一晩に20種類ものワクチン候補を設計。2月には「ワクチン候補の誕生」を宣言し、通常5年以上の開発期間を“光速”の10カ月に縮めてしまった▼ノーベル賞数個分の努力が重層し、こだわりとしなやかさが相乗した奇跡の成果らしい。巡り会える幸運に感謝しつつ、ワクチンが無事に到着し、計画通り粛々と接種できるよう祈りたい。