時評(2月18日)

法制審議会の民法(親子法制)部会は、妻が婚姻中に妊娠したり離婚後に出産したりした子の法律上の父を定める嫡出推定などを見直す民法改正の中間試案をまとめた。 離婚後300日以内に生まれた子を「前夫の子」と推定する今の原則は維持するが、出生時に母.....
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 法制審議会の民法(親子法制)部会は、妻が婚姻中に妊娠したり離婚後に出産したりした子の法律上の父を定める嫡出推定などを見直す民法改正の中間試案をまとめた。[br] 離婚後300日以内に生まれた子を「前夫の子」と推定する今の原則は維持するが、出生時に母が再婚していれば「再婚後の夫の子」とする。また、結婚後200日以内に生まれた子も「夫の子」とみなすことを明記する。現実の親子・夫婦関係を重視した見直しと評価でき、基本的に支持したい。[br] 最近は離婚・再婚の件数が増え、妊娠を契機に婚姻届を出す夫婦の数も増加傾向だ。その中で、再婚後に生まれた子が民法の規定によって前夫の子と戸籍に記載されてしまうなど子に不利益なケースも出てきている。社会変化を敏感に捉え、子の法的地位の安定を主眼として改正に取り組まなければならない。[br] 中間試案では、女性は離婚から100日間、再婚できないとする禁止期間の条項を撤廃する方向が記された。医療の進歩でDNA鑑定などによる決着が可能になっている。女性だけの禁止期間は既に合理性に欠ける。[br] また、民法は夫にだけ、生まれた子が自分の子ではないとして家裁へ訴えることを認めている。戦前の家制度では夫の意思が優先されたが、家族観が多様化し、個人の尊重が意識される今では、これも時代遅れだ。[br] 試案では「嫡出否認権」を拡大し、夫に加え、未成年の子(代理人である母が行使)にも認める。提訴期間も延長する。こうした方向性は望ましい。[br] しかし精子・卵子の提供による生殖補助医療や、非配偶者間の人工授精(AID)が普及し、新たな問題が生まれている。これらに同意した夫にも嫡出否認の訴えを認めるべきか、検討を深める必要がある。[br] 無戸籍児の問題も深刻だ。離婚後に出産した元妻が、現行民法では元夫の子と推定されてしまうのを嫌い、出生届を出さないことが主な原因だ。法務省によると、無戸籍者は昨年12月時点で全国に914人もいる。[br] 試案では、親権者は監護、教育に必要な範囲で子を懲戒できるとする条項も、児童虐待正当化の口実にされるとして改正対象に挙げられた。国連の子どもの権利条約が定めているように、不当な体罰は禁止と明確にしなければならない。それには懲戒権の削除が望ましい。[br] 法制審は2021年度中にも最終案をまとめる。明治に制定された条項が約120年ぶりに改正されるのを期待したい。