新型コロナウイルスの感染爆発の恐れが年始に急に高まり、河川があちこちで氾濫するように医療崩壊が起き始めた。救える命も救えなくなる危機が深刻化している。飲食店の営業時間短縮の限定的対策で感染を確実に抑制できる保証はない。[br][br] 都会で検査陽性率が10%を超え、市中感染が広がっている。感染防止には人の接触減が必要だが、外国のような都市封鎖ができない状況では自粛に頼るしかない。政府が11都府県に出した緊急事態宣言は昨春より緩く、人出は十分減っていない。[br][br] 飲食店を主な対象にした宣言は根拠も目標もあいまいだ。菅政権は「Go To キャンペーン」にこだわって後手に回り、具体策が乏しい。一定の効果はあるにしても、流行の難局を打開できるか、疑わしい。感染は都会から全国に波及し、地方でも過去最多が相次いでいる。[br][br] 感染急増で自宅療養が増え、入院や療養の調整待ちも続出している。軽症でも突然悪化することがある。警察が扱った変死はコロナ感染者が昨年12月に56人に上った。受診しないまま亡くなる悲劇を繰り返さないため、医療の整備は急務だ。[br][br] 医療界挙げて対応を強めてほしい。民間病院の受け入れが少ないのが問題視されているが、規模が小さくスタッフも少ない病院で治療は難しい。回復して感染の危険がなくなった患者を引き受ける後方病院として連携することもできる。コロナ専用の病床や病院を増やし、人とモノを集中させるべきだ。開業医らに協力を求める選択もある。[br][br] 感染拡大から2週間遅れて重症者は増え、死者数はさらに2週間ずれる。全国の重症者は千人に達し、死者は累計で4600人を超えた。感染者が減少に転じても、医療危機はしばらく続く。この危機に際し、感染者の医療を充実させるよう、多くの病院に訴えたい。[br][br] 政府は規制を強めるため感染症法などの改正を泥縄式に準備している。感染症対策の基本は的確な感染者隔離にあるが、人々の信頼や納得、協力が欠かせない。刑事罰や罰則は検査を避ける人や感染を隠す人を増やしかねず、禁じ手といえる。[br][br] ハンセン病などへの差別を反省して感染症法は前文に患者の人権尊重を掲げる。その理念の否定は禍根を残す。日本医学会連合が反対の緊急声明を出した。2010年代にノーベル医学生理学賞を受けた4人の日本人学者も医療崩壊防止とPCR検査大幅拡充などを訴える声明を公表した。決め手を欠く中で具眼の士の声に耳を傾けたい。