米大統領を正式に選出する選挙人投票でバイデン次期大統領(民主党)が確定した。来年1月20日に新政権が発足する。[br] トランプ大統領は依然、敗北を認めていないが、法廷闘争で選挙結果を覆そうとする戦略はすでに破綻しており、逆転の機会は事実上閉ざされた格好だ。[br] トランプ氏はこれ以上、政治的な混乱を助長してはならない。スムーズな政権移行に協力することが最高指導者としての最後の務めと知るべきだ。[br] 選挙後のトランプ氏の負けを認めない抵抗ぶりは異常と言うしかない。根拠を示さずに「不正選挙」と主張し、腹心のバー司法長官が証拠がないと発表した後も、バイデン氏や民主党に対する非難を続けている。[br] 選挙は民主主義の根幹だ。その制度に重大な瑕疵(かし)がないにもかかわらず、独善的な主張を繰り返し、選挙に対する信頼を損ねたことは米憲政史に不名誉な記録としてとどまるだろう。[br] トランプ陣営は選挙結果を覆すために50件を超える訴えを行ったが、ほぼ全てが退けられた。看過できないのはトランプ氏が連邦最高裁の棄却判断を「恥ずべき誤審」とののしったことだ。三権分立への挑戦と受け止められてもやむを得まい。[br] しかし、こうした大統領の言動をいさめようとする動きが与党共和党から出てこないのは残念だ。同氏は負けたとはいえ、7400万票を超える支持を集めており、国を二分するその影響力は絶大。議員たちはその逆鱗(げきりん)に触れることを恐れて萎縮しているようだ。[br] 同氏は2024年の次期大統領選に出馬することを検討しており、退任後も共和党に強い影響力を行使し続けるだろう。[br] 社会の分断の修復を担うバイデン氏はこうしたトランプ氏の存在を意識しながら政権を運営していかなければならず、前途は多難だ。バイデン氏は新政権の人事を進めているが、閣僚らにオバマ前政権時代の人材登用が目立ち、新鮮さに欠ける。「オバマ政権3期目」と批判を浴びるゆえんだ。[br] しかも、次男ハンター氏が対中ビジネスに絡んで検察の税務捜査を受けていることが明らかになった。トランプ政権はロシア疑惑で当初からつまずいたが、バイデン氏も政権発足前から身内のスキャンダルが持ち上がっているのは痛い。[br] 米国ではコロナ禍が急拡大し、国家的な危機に直面、ワクチンの接種が始まったばかりだ。両氏はひとまず対立の矛を収め、共同で対応に当たるべきではないか。