陸奥湾で、特産のホタテ養殖が困難になる恐れがある。青森県産業技術センター水産総合研究所によると、地球温暖化が進めば、21世紀末には高水温に耐えられなくなるという。[br][br] ホタテの稚貝は23度を超すと成長が鈍るため、主に夏でも冷涼な北海道や東北地方で生産される。青森県は籠に入れた稚貝を水深10~15メートルほどで育てる養殖が盛んで、北海道に次ぐ全国2位の生産量を誇る。[br][br] 気象庁気象研究所の水温データでは、21世紀末も地球温暖化の影響が深刻な場合、養殖施設に近い観測地点で、水深15メートルの9月の最高水温が、平年より約4度高い27度超まで上昇するという。[br][br] これを踏まえ水産総合研究所は、4~5月に投入された稚貝が秋までに死ぬ確率を試算。調査方法が異なるため単純比較はできないが、平年の10・5%に対し、2100年には80~100%となり、水温が低い30メートルより深い場所でしか養殖できなくなるという。[br][br] 調査を担当した吉田達(よしだとおる)企画経営監は「深い場所はえさのプランクトンが少なく、籠を深く沈めなくてはならないため作業も重労働。将来的に高水温に強いホタテの開発などに取り組む必要がある」と指摘する。[br][br] 陸奥湾では猛暑だった10年前、高水温で7割近くのホタテが死んだ。後潟(うしろがた)漁業協同組合(青森市)の山口隆治(やまぐちりゅうじ)さん(73)は「ここ10年は水温を気にかけない日はない。養殖を存続させるため、関係機関を巻き込んで、対策を考えていきたい」と話している。