【連載・強まる再編圧力 青銀、みち銀の行方】(上)

経営統合に向けた協議入りを否定したが、将来的な可能性を排除しなかった青森銀行の成田晋頭取(右)とみちのく銀行の藤澤貴之頭取(写真は今年5月の決算発表時)
経営統合に向けた協議入りを否定したが、将来的な可能性を排除しなかった青森銀行の成田晋頭取(右)とみちのく銀行の藤澤貴之頭取(写真は今年5月の決算発表時)
「そんな事実は一切ない。どこから出た情報か」 9月4日午後7時すぎ。青森県を地盤とする青森銀行とみちのく銀行が経営統合に向けた協議に入った―との一報が、共同通信社から配信された。 その直後から両行には報道機関から問い合わせが殺到。対応に追わ.....
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 「そんな事実は一切ない。どこから出た情報か」[br] 9月4日午後7時すぎ。青森県を地盤とする青森銀行とみちのく銀行が経営統合に向けた協議に入った―との一報が、共同通信社から配信された。[br] その直後から両行には報道機関から問い合わせが殺到。対応に追われた広報担当者は情報の真偽を知る由もなく、「聞かれても『ない』としか言えない。何も分からない」と困惑気味に繰り返すだけだった。[br] 一夜明けた5日、両行のトップはそれぞれ協議入りを否定。だが、将来的な合従連衡の可能性については次のような見解を示した。[br] 「銀行や顧客、地域にとって良いことなら考えるのは当然なこと」(青銀の成田晋頭取)[br] 「数ある選択肢の一つ。頭の片隅に置いておかなければならない時代だ」(みち銀の藤澤貴之頭取)[br]   ◇    ◇[br] 両行の経営統合案がこのタイミングで浮上したのには理由がある。今年11月に施行される独禁法の適用から地銀を除外する特例法と、地銀再編に推進的な立場を取る菅義偉新首相(当時、官房長官)の存在だ。[br] これまで同一県内の地銀の経営統合は、地域で独占状態が生じるため実現が難しかったが、特例法により可能とした。人口減少や日銀の低金利政策で、収益が先細りする地銀の再編を加速させ、経営基盤の強化を図る狙いがある。[br] 県内の貸出金シェアが7割を超える両行が経営統合する場合、特例法の適用が不可欠。両行の関係者は「政府のターゲットにされてもおかしくない」と危機感を募らせる。[br] 肝いりの施策を実現したい菅氏は、先の自民党総裁選で地銀再編に再三言及。「(地銀の数が)将来的には多すぎる」(9月2日の会見)、「再編も一つの選択肢」(3日)と政治的な圧力を強める。[br] 両行を「特例法第1号」としたい政府の思惑が透けて見える。[br]   ◇    ◇[br] 長年にわたり同一地盤で顧客を争い、勢力を拡大してきた両行。ライバル同士が手を握る―との“寝耳に水”の報道に、県内経済界は衝撃を受けている。[br] 両行の関係者は「金融庁主導で再編を狙っているとは聞いていたが、突然で驚いた」と明かし、「統合や合併が顧客のためになるかは疑問だ」と懐疑的だ。[br] 一方、地域金融の専門家は「いずれ再編は避けられない」と冷静に受け止め、「同規模の統合は、店舗削減などメリットが一番大きい」と期待感を寄せる。[br] ただ、企業風土や役員配分、行員の処遇、システムの統一化など足かせの多さを不安視。「仮に統合協議に入ったとしても、調整がうまくいかず、物別れに終わる可能性も高い」と指摘する。[br]   ◇    ◇[br] 突如浮上した青銀とみち銀の経営統合案は、県内で大きな注目を集めている。地銀を取り巻く厳しい現状や、経営統合が地域に与える影響を探る。経営統合に向けた協議入りを否定したが、将来的な可能性を排除しなかった青森銀行の成田晋頭取(右)とみちのく銀行の藤澤貴之頭取(写真は今年5月の決算発表時)