時評(9月20日)

三沢市は2016年から、自分とは違う誰かを思いやり、適切な理解の下で行動する「ユニバーサルマナー(UM)」の普及・啓発に努めている。小中学生を対象に教室を開催。障害の有無を問わず、誰もが安心して暮らせる「共生社会」の実現を目指す市にとって、.....
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 三沢市は2016年から、自分とは違う誰かを思いやり、適切な理解の下で行動する「ユニバーサルマナー(UM)」の普及・啓発に努めている。小中学生を対象に教室を開催。障害の有無を問わず、誰もが安心して暮らせる「共生社会」の実現を目指す市にとって、将来のまちを形づくる重要な事業だ。[br] UMは日本ユニバーサルマナー協会(大阪市)が提唱する、多様な人々と向き合うための意識や行動を指す造語。多様性への対応を進めるべく導入する国内企業もある。[br] 障害者や高齢者、妊婦、外国人など、日常生活において多様なニーズを抱えている人は少なくない。そのような人々と同じ目線に立てば、自らでは解決できずに助けを求めたい場面があることが容易に想像できよう。[br] 同協会講師の原口淳さんは「障害は人でなく環境にある」と語る。人それぞれのニーズを理解すれば、社会の側にある障害を見つけられるはず。それらを取り除くことが、暮らしやすさの追求につながる。[br] 社会で生きる私たちに必要なのは、周囲の人々との違いを理解すること。自分と全く同じ他者は存在しない―と認識してどう向き合うかを学び、援助の手を差し伸べる姿勢と心構えを身に付ける。UMを学ぶことは、一人一人が助け合う社会を実現するための第一歩になる。[br] 原口さんは社会での声掛けの大切さを強調する。困っている人を見掛けたら、相手が求めるものが分からなくても、まずは行動する。迷わず動けるように意識を変えることが、私たちに求められているという。[br] 自発的な行動を促すため、地域で声掛けを「ためらわない」「してもらいやすい」環境を整えるのもいい。例えば、誰かが何らかの支援を必要とするケースが多い施設に標識を設置するなど、広く周知してはどうか。設備を整備したり直したりするよりコストがかからず、まちの雰囲気は友好的に変わる。[br] 少子高齢化の加速によって社会の変容が続く中にあって、さらに住民の共助が問われていくだろう。住みよい地域を守っていくためにも、個人の意識を変える必要がある。[br] 5年目を迎えた三沢市の取り組みは、将来の日本を担う人材を育んでいると言えよう。子どもたちには、社会で最も大切なことを学んでいるという自信を持って、その考えを家庭や地域、周辺自治体、国内外へと広めることを期待したい。[br] われわれも今すぐできることから始めよう。